


【北京で小山大介本社報道部記者】北京冬季五輪のスノーボード女子ビッグエア決勝で4位だった福島県ゆかりの岩渕麗楽選手(20)=バートン、岩手県出身=は表彰台を逃したものの、女子選手では公式戦史上初の大技に挑むなど最後まで果敢にメダルを狙う姿勢を貫いた。「最後にチャレンジできたのは良かったが、結果につながる滑りができず、悔しい」。競技を終え、ほほをつたう大粒の涙を止められなかった。
公式練習で右肘を打撲し、前日の予選で転倒し左手甲を骨折するなど満身創痍(そうい)で臨んだ。「五輪に出るまで支えてくれた多くの人にメダルという形に残るもので恩返ししたい」。強い決意で臨んだ1回目。初出場だった前回平昌大会ではミスした斜め軸に縦2回転、横3回転のジャンプを決めた。2回目は同じ技を進行方向を変えて成功させ、暫定で4位に付けた。
メダルが懸かる最終滑走。女子では史上初、後方へ縦に3回転する「トリプルアンダーフリップ」に活路を求めた。2年前から練習していた技だが雪上で飛ぶのは初めてだった。「今しか挑戦できない。絶対に立つ」。集中力を高め、北京の大空へ飛び出した。149センチの小柄な体が1回、2回、3回と回転すると、会場からどよめきが起きた。両足での着地に成功したが、踏ん張りきれずに背中を付いた。跳躍直後、他国のライバルが次々と駆け寄り、悔しがる岩渕選手を抱きしめて果敢な挑戦をたたえた。
2大会連続の4位となり、悲願のメダルには届かなかったが、五輪の歴史に残る攻めの姿勢を世界の観衆に印象付けた。「悔しいけれど、素晴らしい場所にいられていると思う」と気丈に語り、2度目の五輪での挑戦を終えた。
■「私の今できる全て」 鬼塚選手高難度の技、着地失敗
女子ビッグエア11位の鬼塚雅選手(23)=星野リゾート、熊本県出身=は「必死に練習してきた技が決められず悔しい」と、届かなかったメダルへの思いを絞り出した。
1回目から横3回転半の高難度の技で積極的に勝負を仕掛けたが高さ、回転ともに足りず、着地で転倒して全身を強打した。「怖いけど、いかなきゃ」。覚悟を決めて臨んだ2回目に逆スタンスから縦2回転、横3回転半の大技「キャブダブルコーク1260」に挑んだが着地が乱れ、得点を伸ばせず表彰台が遠ざかった。
雪とは縁遠い九州出身。幼少期に磐梯町の星野リゾートアルツ磐梯で開かれた教室に参加したのを機に競技に目覚め、世界を転戦する選手にまで成長した。2度目の五輪で思い描いていた結果は出せなかった。「4年間、やれる努力はやってきた。私の今できる全てが、この結果だと思う」と受け止めた。
■アルツ磐梯で町民ら応援
鬼塚選手所属の星野リゾートのスキー場アルツ磐梯(磐梯町)では15日、町主催のパブリックビューイングが開かれ、町民らがエールを送った。
アルツ磐梯の森本剛総支配人(41)は「1、2回目に最大難度の大技で挑んだ姿に執念を感じた。誇りに思う」とたたえた。日本勢が決勝で活躍したことに触れ「鬼塚選手が平昌から4年間、第一人者として日本勢をけん引してきた結果。笑顔で帰ってきて」とねぎらった。