戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―

【戻せ恵みの森に ―原発事故の断面―】第3部 除染(19) 国の基準高い障壁 「元の状態に戻して」

2022/02/28 18:02

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南相馬市小高区の懸の森は登山客に人気だったが、里山再生事業による除染の対象には認められなかった=2010年4月
南相馬市小高区の懸の森は登山客に人気だったが、里山再生事業による除染の対象には認められなかった=2010年4月

 東京電力福島第一原発事故で打撃を受けた森林環境の回復に向けた里山再生事業は、除染、森林整備、放射線量測定の中から二つか三つのメニューを組み合わせて行われている。ただ、このうち除染について、環境省は、除染の長期的な目標とする年間追加被ばく線量一ミリシーベルト以下となる場所は対象としない|との基準を設けている。市町村からは「事業で除染を実施するにはハードルが高い」との声が上がる。

 市町村から要望があった場所については、環境省と林野庁、復興庁が現地調査する。人が立ち入る道などを歩き、個人線量計などで一時間当たりの被ばく量を調べる。市町村に里山の利用頻度を聞き取った上で、一年間の追加被ばく線量を計算する。

 里山には局地的に放射線量が高い地点もあるが、環境省は「その場に何時間もいるのは想定しにくい」と強調。高放射線量箇所を人が通過した際の被ばく量や、一時間当たりの平均被ばく量などを基に除染の必要性を判断している。

 南相馬市は、小高区の懸(かけ)の森(標高五三六メートル)で里山再生事業の実施を求めている。登山道の除染を希望したが、放射線量は環境省が定めた基準値以下のため認められなかった。ただ、登山道の一部には放射線量の高い場所がある。

 懸の森は古くから山岳信仰の霊場だったとされる。原発事故発生前は、登山の初心者から上級者まで多くの人が訪れていた。現在は手入れがされていないため、倒木などがあり荒れ果てた状態となっている。

 環境省は放射線量が高い場所について、里山再生事業とは別の線量低減策を示し、市と協議している。

 川俣町では、山木屋地区の「第二親子の森」で里山再生モデル事業が行われた。町は他の場所でも事業による除染を望んでいるが、放射線量が基準値以下のため実現に至っていない。町原子力災害対策課の大槻友徳課長補佐兼除染対策係長は「里山を元の状態に戻してほしい。復興は終わっていない」と訴える。

 国は二〇一五(平成二十七)年、有識者による環境回復検討会で森林除染を見送る結論を出した。その後、議論は進んでいない。