地震、津波からの福島県内の復興状況 「福島県の今について最も関心があること」

2022/03/01 03:02

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福島県内初の震災遺構として整備された浪江町の請戸小。太平洋を望む沿岸にあり、東日本大震災では津波が押し寄せた(小型無人機で撮影)
福島県内初の震災遺構として整備された浪江町の請戸小。太平洋を望む沿岸にあり、東日本大震災では津波が押し寄せた(小型無人機で撮影)
津波の爪痕を残す震災遺構として整備された請戸小。2021年10月から公開され、津波の恐ろしさと避難の大切さを来訪者に発信している
津波の爪痕を残す震災遺構として整備された請戸小。2021年10月から公開され、津波の恐ろしさと避難の大切さを来訪者に発信している

 「オンデマンド調査報道(JOD)」パートナーシップの加盟社協働アンケートの「福島県の今について最も関心があること」の質問で、2番目に関心が高かった地震、津波からの福島県内の復興状況について福島民報社が取材した。

 2011年3月11日に起きた東日本大震災で、福島県では最大震度6強の揺れを観測した。福島県内三地方のうち太平洋沿岸の「浜通り」には大津波が襲来し、多くの人命が失われた。須賀川市の農業用ダム決壊、白河市の大規模土砂崩れなど内陸の被害を含めた死者(直接死)は1605人、住宅被害は全半壊約10万棟をはじめ約24万棟に上り、海岸堤防(防潮堤)や港湾・漁港、道路、橋などにも甚大な被害が出た。

 防潮堤や港湾・漁港、河川など災害復旧の対象となった県土木部所管の2158カ所のうち、今年1月末現在で2144カ所(99%)が完了。防潮堤は事業延長約6万9000メートルのうち、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域の一部を除く約6万7500メートルで復旧し、高さも7・2メートルまたは8・7メートルにかさ上げされた。

 地震・津波被災者向けの災害公営住宅は計画された約2800戸全て、東京電力福島第一原発事故の被災者向けは約4750戸が完成した。津波被害を受けた集落を高台や内陸に移す防災集団移転促進事業は相馬市、南相馬市など7市町で計画され、移転先の造成などが完了し、被災者は新たな生活を始めている。

 復興の加速化に向け、人や物を運ぶ交通網の整備も進んだ。浜通りを南北に貫く大動脈の常磐自動車道が2015年に全線開通し、2020年には同じく南北を結ぶJR常磐線が全線再開した。2021年には浜通りと内陸側の「中通り」を県北部で結ぶ横軸の東北中央自動車道「相馬福島道路」が開通した。

 インフラや交通網などハード面の復旧が進む一方、生業(なりわい)の再生や記憶の風化が課題となっている。

 原発事故の発生後、漁業では市場の評価を調べるため魚種や海域を制限する福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の「試験操業」が長く続いた。沿岸漁業の水揚げ量は試験操業を終えた2021年でも4976トンと震災前の約2割にとどまる。国などが主導している再生可能エネルギーの導入やロボットといった新産業の育成も依然として道半ばだ。

 逆境を好機に変える一手として、福島県などが力を入れているのが交流人口の拡大だ。復興の現状に触れてもらう旅を「ホープツーリズム」と銘打ち、教育旅行や企業研修向けの周遊コースやツアーの情報発信に努めている。2020年に双葉町に開館した東日本大震災・原子力災害伝承館や、2021年に浪江町で公開が始まった震災遺構の請戸(うけど)小など訪問の中心となる施設の充実を追い風として、2021年度の旅行者は4月から11月までの速報値で約6500人に上った。県観光交流課の担当者は「家族や友人など少人数向けのプランづくりや受け入れ体制の充実を急ぎたい」と意気込んでいる。

<キーワード>

※ホープツーリズム=東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に見舞われた福島県の復興の歩みや現状を知ってもらう「学びの旅」を指す。「福島のありのままの姿(光と影)」を「見て」「聞いて」「考える」ことで、震災・原発事故の教訓を自分事と捉えてもらう。交流人口拡大や風評・風化対策を目的に、県が2016年度から力を入れ始め、内堀雅雄(うちぼり・まさお)知事が積極的にアピールしてきた。福島県観光物産交流協会などがツアー商品や周遊コースの企画・運営に当たり、参加者は年々増加傾向にある。児童生徒の教育旅行や企業・団体による視察研修をはじめ、個人旅行など多様な形態がある。

<記者コラム>

 3月11日が近づくと、よく見掛ける言葉に「東北被災三県」がある。東日本大震災で特に大きな被害が出た岩手、宮城、福島を総称する表現だ。このうち福島県は東京電力福島第一原発事故との「複合災害の地」という側面がある。「地震や津波の被害が原発事故の影に隠れている」。そんな声を沿岸部の取材先などでしばしば耳にしてきた。

 津波や地震による福島県内の死者は1605人。大津波が浜辺の風景と住民の営みを破壊した。ただ、復旧・復興の進展に伴い、災禍の爪痕を残す場所は年々少なくなっている。浪江町の海沿いに建つ震災遺構の請戸小は被災の実情を伝える建物だ。がらんとした教室や変形した備品類が学校という身近な場を襲った津波の脅威と、教訓をまざまざと訴えている。「あの日」に何が起きたのか。多くの人に福島の地を訪れ、肌で感じてもらいたい。(福島民報社・社会部キャップ 鈴木宏謙)