大相撲 郷土力士の話題

【若隆景 賜杯への軌跡(上)】負けん気強い末っ子 研究重ねた小中時代

2022/03/29 10:10

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吉井田小3年生当時の若隆景関(2列目中央)。大柄な相手に対する「下からの攻め」は小学生の頃から意識していた(家族提供)
吉井田小3年生当時の若隆景関(2列目中央)。大柄な相手に対する「下からの攻め」は小学生の頃から意識していた(家族提供)

 大相撲春場所で初の賜杯を手にした福島市出身の若隆景関(27)=本名・大波渥さん、荒汐部屋=は、体格で上回る相手に勝つための基礎を福島県の土俵で身に付けた。研究熱心で負けん気が強い性格や、相撲一家に育った環境が成長を加速させた。細身ながら真っ向勝負を貫く27歳に、県民はさらなる高みへの期待を抱く。角界に誕生した新ヒーローを巡る、人々の思いを追う。


 「もう大変」。福島市で飲食店「ちゃんこ若葉山」を営む若隆景関の父大波政志さん(54)=元幕下若信夫=は28日、言葉とは裏腹に満面の笑みを見せた。祝福の花や電話が次々と届き、テレビの生中継も続いた。

 午前中、相撲絡みの連絡をほとんどしない末っ子から「優勝できました」と電話があった。政志さんは「よく頑張ったな」と祝福した。脳裏には、小さな体で2人の兄に“子ども扱い”された幼少期の姿が浮かんだ。

 出生時の体重は3600グラム。3兄弟では一番軽かった。長兄の若隆元(30)=本名・大波渡さん=、次兄の若元春関(28)=本名・大波港さん=と共に福島市の吉井田小1年時から県北相撲協会主催のわんぱく相撲教室に通った。

 若隆景関は基本の四股やすり足を幾度も繰り返した。近年の躍進を支える「下からの攻め」は、この頃から意識する。最初は歯が立たなかった相手にも、下から食らいつくと少しずつ勝てるようになった。信夫中1年時の県中体。体格の大きな相手に浴びせ倒しで敗れた。必死で食らいついたが、頭から土俵下に落ち、脳振とうで救急搬送された。27日の優勝決定戦で見せた勝利への強い執念は、当時から変わらない。

 学ぶ姿勢も昔から人一倍だった。大相撲中継を欠かさず見ていた。「私の解説をよく聞いていた」と政志さん。幕下力士だった父の言葉を自分なりに解釈し、稽古で実践した。

 体重130キロは幕内で下から3番目。小兵力士は一般的に、素早い左右の動きで相手を揺さぶる取り口が多い。だが若隆景関は相手の肘付近を外側から絞る「おっつけ」や脇の下に手のひらをあてがう「はず押し」を武器とする押し相撲に徹する。

 今場所は12勝のうち8勝の決まり手が寄り切り。従来の差し手のうまさに加え、押しの威力アップが好成績を引き寄せている。

 順調な成長曲線を描いてきた。春場所で周囲の期待をまた1つ超えた。本人も「びっくり」という幕内最高優勝は、父や祖父の元小結若葉山(故人)が果たせなかった相撲一家の悲願だった。