論説

【観光船遭難事故】再発防止へ総点検を(4月26日)

2022/04/26 09:03

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 北海道・知床半島沖で発生した観光船の遭難事故は多くの死者を出す惨事となった。本県在住者も巻き込まれた。行方不明者の一刻も早い発見を切に願う。再発防止に向けては原因究明と関係事業者への指導が求められるだけではない。大型連休が迫っている。多数の人々を迎える県内の観光・レジャー施設や交通機関なども安全点検を徹底してほしい。

 乗客乗員二十六人を乗せた観光船が二十三日午後に消息を絶って四日になる。家族との楽しいはずの時間は一変し、荒れた冷たい海に投げ出された。引き上げられても、死亡が次々と確認されていく。幼いこれからの命も失われた。あまりに痛ましい。

 第一管区海上保安本部による懸命の捜索が続いている。地元の漁船も複数加わり、範囲を広げて活動している。ただ、現場海域の速い潮の流れと風向きの変化に左右される。乗船者の低体温症なども心配され、時間の猶予もない。海難事故が引き起こす事態の深刻さをまずは肝に銘じなければならない。

 当日は未明に強風注意報、朝から波浪注意報が出ていた。「今日はやめたほうがいい」と知人らは出航前、助言や注意をしていたという。当日の気象条件での運航自体が異常ではないか、といった指摘も出ている。悪天候が予想される中での運航は妥当だったのか。出航を決めた理由と背景は何か。国の運輸安全委員会や海上保安庁による解明が待たれるが、いずれにしても運航会社の責任の所在は明らかにされねばならない。

 重要なのは、今回の事故を観光船のみの問題にとどめず、どの業種にでも起こり得るという緊張感を強めることだろう。集客を伴う施設や人員輸送に携わる事業者は、安全管理に手落ちや不足はないかを総点検し、必要な対策を速やかに講じる必要がある。

 観光船の遭難事故を巡り、国内では長野県軽井沢町で二〇一六(平成二十八)年に起きたスキーツアーバス転落事故を思い返した人もいるのではないか。大学生ら十五人が死亡し、バス会社の運行態勢が厳しく問われた。全国の貸し切りバス会社に対して国は、原点に立ち返って業務に当たるよう通知した。

 重大事故が起きるたびに業界を指導したり調査で全国の実態を把握したり、同じような対応が繰り返されてきた。それでも同種の事故は絶えず、国側の監督責任が取りざたされた例は少なくない。国も旅客船だけではなく集客関連業全般に幅を広げ、対策を強化すべきだ。(五十嵐稔)