論説

【金融教育拡充】経済を見る目養って(5月6日)

2022/05/06 09:05

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 新たな学習指導要領の導入に伴い今年度から、高校家庭科で金融商品や資産形成を学ぶ授業の内容が拡充された。脱炭素化の流れや感染症拡大、激動する国際情勢などを背景に、日本経済は大きな転換期を迎えている。株式、債券の種類や特徴を教えるのを振り出しに、各校は独自の裁量で経済・金融全般に対する生徒の関心を広げる取り組みに注力してほしい。

 新要領に基づく金融の授業では、預貯金、株式、債券、投資信託などそれぞれの安全性や収益性を取り上げ、老後も見通して資産を確保する重要性にも触れる。株や投信の仕組みを知ることは、企業が利益を得るために人を雇い、商品やサービスを生み出す資本主義経済の基礎を理解する第一歩と言える。国債についての知識は、国家財政の健全性を確保する大切さや社会保障、公共事業の在り方を考える下地になる。

 日銀が事務局を務める金融広報中央委員会の金融リテラシー調査(二〇一九年三月実施)では、「金利」「インフレの定義」など金融に関する設問で、日本の平均正答率は英、独、仏の三カ国を下回った。同じ調査で「学校で金融教育を行うべき」と回答した県民の割合は71・7%に上ったが、「学校などで金融教育を受けた」と答えたのは7・2%にとどまった。今回の新要領に基づく対応は、日々の暮らしを支えるお金の知識を豊かにしたいとの求めに、教育界が応じる形になったと前向きに評価できる。

 日本経済は、安倍晋三元首相が進めたアベノミクスの成果を総括する時期を迎えたと言えよう。岸田文雄首相が提唱する「新しい資本主義」は具体像の提示が求められ、日銀が続けてきた大規模な金融緩和策の行方も注目される。為替レートの推移や物価動向にも高い関心が集まっている。家庭科の金融教育に加え、高校の公共の時間では市場の機能など経済社会の仕組みを学ぶ。政治や政策など時事的な情勢について、各校が独自に指導内容を決める学校設定教科で認識を深めるのも一案だ。十八歳から参加する選挙で投票先を判断するための参考にもなるだろう。

 県内ではキャリア教育の一環で、小中学生が企業経営を体験する事例がある。楢葉町の楢葉中の生徒は模擬会社を運営し、特産品開発を進めている。社長をはじめ、製造、広報両部門の部長を置き、年間決算を町長に報告する。こうした活動は高校での経済・金融に関する学びの土台になる。県内に広がるよう期待したい。(菅野龍太)