「飯舘牛」復活へ 取り組み加速 21日に原発事故後初、地元産牛肉販売 福島県飯舘村

2022/05/20 09:40

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飯舘牛ブランド復活に向け、肥育を続ける佐藤さん
飯舘牛ブランド復活に向け、肥育を続ける佐藤さん

 東京電力福島第一原発事故の影響で、ブランドが途絶えた福島県飯舘村の「飯舘牛」復活を目指す取り組みが加速している。21日には地元生産者が手掛けた飯舘産牛肉が原発事故発生後、初めて村内で販売される。村は今年度、JAや生産者、流通業者らと連携し畜産振興に向けた検討会を発足させるなど、基幹産業の再興を後押しする。

 21日に販売される牛肉は、避難指示解除後に肥育を始めた佐藤一郎さん(61)=村内大倉地区=が出荷した。繁殖を専門としていた佐藤さんは、原発事故により相馬市の仮設住宅に避難した。帰村後、古里の誇りだった飯舘牛ブランドの再興を目指し、2019年夏から黒毛和牛2頭を肥育してきた。

 今年4月に初出荷を迎え、肉質はいずれも最高級A5ランクの評価を受けた。佐藤さんは「飯舘牛復活への第一歩。肥育に取り組む仲間を増やし、古里の畜産業を盛り上げたい」と前を見据える。

 飯舘牛は1985(昭和60)年ごろ、和牛の繁殖が盛んだった村に新たな特産品を生み出そうと地元生産者らが肥育に取り組み、ブランド化された。きめ細かい霜降りと柔らく甘みがある肉質が特徴で、全国的に高い評価を得ていた。原発事故前の2010(平成22)年度には村内の畜産農家は約230戸、飼育されていた牛は約2600頭に上っていた。

 だが、原発事故による全村避難で産地は壊滅的な打撃を受けた。県全体で見ても、原発事故に伴う風評などにより厳しい状況が現在も続く。農林水産省によると県内の肉用牛飼育戸数は、2010年は4300戸だったが、2021(令和3)年は1750戸まで減っている。県産牛枝肉の平均卸売価格は、全国と比べ依然として1割程度低いままだという。

 村の避難指示は2017年3月に一部を除き解除されたが、村によると、古里で営農を再開したのは現在でも繁殖農家10戸程度。飼育に約30カ月必要で手間の掛かる肥育牛を生産するのは、このうち3戸にとどまっている。肥育牛に取り組む農家が少ない中で、関係者は今回の飯舘産牛の村内販売が生産振興の足掛かりになると期待する。

 村は検討会で加工や流通など畜産業振興の在り方を協議していく方針。また、繁殖牛の遺伝子評価をする際の経費補助も始める。繁殖牛の能力を見極め、優良な子牛の効率的な生産につなげてもらう。農家の経営安定を後押しすることで、繁殖牛に加え肥育牛の飼育も促していく。

 ブランド復活には、村産牛肉の安定的な出荷や村内での加工・販売体制の再構築などが不可欠だ。杉岡誠村長は「課題解決に向け、国や県と連携を強化していく。まずは農家の思いも含め、村産牛肉の魅力発信に努めたい」と話した。