論説

【新酒鑑評会9連覇】消費拡大で祝意示そう(5月26日)

2022/05/26 09:12

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 酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が共催する二〇二一酒造年度(二〇二一年七月~二〇二二年六月)の全国新酒鑑評会で、県産酒が金賞数で九連覇を達成した。新型コロナウイルスの影響で販売量が伸び悩む中、高品質の酒造りを続けた蔵元をたたえるとともに、消費拡大への取り組みを一段と強めていきたい。

 平時なら十二月から四月の忘新年会、歓送迎会などで大量消費が見込まれる。しかし、コロナ禍の長期化に伴い二〇二一酒造年度も引き続き難しいとみて、仕込みを大幅に減らす蔵元が相次いだ。県酒造組合によると、コロナ禍前の二〇一八酒造年度の製造量は九千九百八十二キロリットルだったが、二〇二〇酒造年度は二割減の七千八百二十二キロリットルとなった。今回は、さらに二~三割程度減らした蔵元が多く、半減させた例もあった。県内のある蔵元は「おいしい酒を造っても、飲んでもらえるか分からないという葛藤の中での作業はつらかった」と明かす。そうした状況でも妥協せず、全国トップレベルの酒造りに注力する蔵元を応援し続けてこそ、伝統と技術は守られていく。

 県産酒全体の出荷量のうち、吟醸、純米といった「特定名称酒」は二〇一三(平成二十五)年に金賞受賞数日本一を獲得して以降、増加に転じた。新型コロナが影響を及ぼし始めた二〇二〇(令和二)年は前年比で10ポイント近く落ち込んだものの、翌年は県産酒全体が8ポイント減だったのに対して、特定名称酒は3ポイント減にとどまった。県酒造組合は特定名称酒のブランド化が進んでいると捉え、需要をさらに高めていきたいとしている。

 昨年の全出荷量に占める特定名称酒の割合は六割にまで高まった。県は首都圏や関西圏で県産酒が飲める約五百店を検索できるサイト「福の酒」で、県外の消費拡大を目指している。インスタグラムでも酒蔵を紹介し、女性や若者などの新しいファンづくりを進める考えだ。

 昨年度は千円以上で二百円割引になるクーポン七十一万枚を県が、県内の酒販店などに配布し、95%が使われ、「家飲み」需要に貢献した。今年度も計画しており積極的に活用したい。飲食店に乾杯用の県産酒を配る事業も始める。

 会津若松市は、飲食店を巡るスタンプラリーに参加すると県産酒一杯をサービスする取り組みを展開し、好評という。こうした企画が他の地域にも広がってほしい。今年は十連覇を懸けた仕込みとなる。県内五十六酒蔵の努力を消費という形でしっかりと後押ししよう。(安島 剛彦)