県は二〇五〇年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けた工程表をまとめた。十年単位の数値目標を設け、実行すべき各種施策を示した。達成には県民や企業の理解に加え、着実に行動する機運と仕組みづくりが求められるだろう。
二〇五〇年度の県内排出量の目標を百三十万トンに設定した。県内の森林が一年間に吸収できる温室効果ガスが百三十万トンのため、相殺すれば排出量が実質ゼロになると計算した。ただ、二〇一三(平成二十五)年度の排出量は千八百七十万トンで、93%に相当する千七百四十万トンを削減することになる。極めて高い目標といえる。
想定によると、現行の対策だけでも人口減少などの影響で約五百二十万トンの削減が見込まれる。残りは水素などの新燃料や再生可能エネルギーを導入することで約五百七十万トン、省エネルギーの徹底で約六百五十万トンを減らせるとした。
省エネの具体策として、空気中の熱などを有効に活用する技術「ヒートポンプ」の普及、燃費に優れた次世代自動車やLED照明などへの切り替え、ごみの減量化、活動の効率を高めるコンパクトなまちづくりなど数々の取り組みを例示した。
住宅建設では、二〇三〇年度以降に新築する全ての建物で環境に配慮した「ゼロ・エネルギー・ハウス」化を図り、中古住宅は高気密高断熱への改築を促していく。個人の費用負担が大きくなるのを踏まえて、県は補助制度などを検討するとしている。多額の財政支出が予想されるため、必要な予算を計画的に確保していかなければならない。同時に、新技術の開発による削減効果の向上や省エネ機器の導入、購入コストの低減を推し進める必要がある。
工程表は施策の方向性を示すのが狙いで、具体的に県民が何をすべきかは記していない。県は今後、詳細な活動事例をまとめたパンフレットを作成する予定だ。家庭で水道やシャワーを小まめに止めるだけで、一世帯で年間三十キロの削減につながるとされる。身近なところから手軽に取り組める事例を数多く示してほしい。
昨年の県民世論調査で、省エネを意識して行動していたのは半数に満たなかった。東京電力福島第一原発事故を教訓に、「再生可能エネルギー先駆けの地」を目指す意識を一人一人が強く持ち、工程表を手掛かりに脱炭素社会を実現させたい。(角田守良)