福島県沖地震から3カ月 相馬野馬追出陣「地域を元気づけたい」 南相馬市で被災の男性

2022/06/15 09:50

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有
福島県沖地震で全壊した蔵を前に、地域を盛り上げると意気込む鈴木さん
福島県沖地震で全壊した蔵を前に、地域を盛り上げると意気込む鈴木さん
相馬中村神社で修復中の太鼓橋などを見つめ、野馬追の開催に向けて思いを強くする宮司の森さん
相馬中村神社で修復中の太鼓橋などを見つめ、野馬追の開催に向けて思いを強くする宮司の森さん

 福島県沖を震源とする最大震度6強の地震から16日で3カ月となる。地震では、相双地方の伝統行事「相馬野馬追」関係者の住宅なども多く被災した。最も被害が大きかった地域の一つである南相馬市鹿島区では、会社役員鈴木広美さん(53)が被災を乗り越え、出陣準備を進める。「伝統をつなぎ、地域を活気づける」。3年ぶりの通常開催となる野馬追を盛り上げると誓う。

 鈴木さんは約30年間、地元の北郷騎馬会から相馬野馬追に出陣している。地震では、築約百年の蔵が全壊し、自宅近くにある経営する会社事務所の壁の一部が崩れた。今も修理は完了せず、自らの手で施した応急処置のみの状況だ。

 南相馬市によると、7日午後5時現在、市内の住宅(住家・非住家の合計)で4417件のり災申請を受け付けた。被害が確定した4297件のうち、鹿島区の被害は2279件に上る。北郷騎馬会に所属する仲間の多くが被害を受けているという。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い2年連続で規模を大幅に縮小して開催した相馬野馬追。「街の活気の衰退に及ぼす影響は大きい」と実情を話す。自らも困難な状況ではあるが、ベテランとして野馬追の楽しさや文化を継承することが先人への恩返しだと捉え、出陣を決めた。

 「武士は食わねど高ようじ、侍として野馬追に出陣しているんだ」と気丈に語る。当日は長男の勇志さん(27)も出陣する予定だ。「無事に全行事をやり切り、気持ちよく鹿島に戻って元気づけたい」。地震による被害の爪痕が残る鹿島区の商店街を騎馬武者として練り歩く日を思い、馬の手入れに励んでいる。


■復旧作業急ピッチ 総大将出陣の地・相馬中村神社

 相馬野馬追で総大将出陣の地となる福島県相馬市の相馬中村神社は、昨年2月の地震で壊れた神社施設すべての修復が完了した矢先の今年3月に震度6強の地震に見舞われた。

 地震で神社は再び被害を受け、道の灯籠は全壊。境内と参道の「結界」にある石造りの太鼓橋や、境内の二つの鳥居も崩れ落ちた。

 「野馬追に間に合うのか…」。宮司の森拓樹さん(43)は昨年を上回る被災に、目の前が真っ暗になったという。ただ、業者などの協力で壊れた灯籠や橋の復旧は急ピッチで進んでいる。氏子総代会も修復費の確保に向けてクラウドファンディングに取り組んでいる。

 今回は相馬中村藩主家第33代当主・相馬和胤(かずたね)氏の孫の相馬言胤(としたね)さん(13)が総大将として初陣を飾る節目の野馬追になる。傷ついた社に、じくじたる思いの一方、飢饉(ききん)や災害の危機を乗り越え、先人が脈々とつないだ伝統に対する誇りは消えない。

 森さんは「度重なる災害に屈することなく、総大将の元服と初陣にふさわしい出陣式を執行したい」と固く誓っている。