論説

【県文化センター】将来像探る議論を(6月24日)

2022/06/24 09:00

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 福島市にある県有施設とうほう・みんなの文化センター(県文化センター)の建て替えを求める動きが出てきた。築五十年を経て老朽化し、三月の本県沖地震で被災した大ホールは再開の見通しが立たない。復旧を急ぐとともに、将来を見据えて建て替えの議論を始めるべきだ。

 県芸術文化団体連合会(芸文連)は十日、県に大ホールの早期復旧と新たな県文化センターの設置を要望した。指定管理者の県文化振興財団も、新施設に関する議論の開始を提言した。県は大ホールの復旧に注力する方針で、建て替えを検討する考えは示さなかった。

 大ホールは地震で激しく損傷し、被害の全容を把握する調査さえ進んでいない。予約を受けることができず、世界的な音楽家のコンサートなどの開催も断念している。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故、コロナ禍を経験し、芸術文化に触れる日常の尊さを実感した県民は多いだろう。まずは早期復旧に努めてほしい。

 現施設は千七百五十八席の大ホールをはじめ小ホール、展示室などを備え、一九七〇(昭和四十五)年に開館した。本県における芸術文化の拠点としての役割を担っているが、経年劣化による設備の不具合が頻発し、震災以降は地震による利用停止が相次いでいる。

 芸文連は復旧作業とは別に、現在地周辺を念頭に建て替えの実現を求めている。今後も自然災害が予想される中、耐震性に優れ、非常時に住民を受け入れる機能も備えた施設の必要性を訴える。新施設をシンボルとして、国内最大規模の文化行事「国民文化祭」を誘致したいとの願いもある。

 近県では、昭和三十年代後半に建てられた県立文化施設の建て替えが進んでいる。山形県では一昨年、秋田県では今月、新施設がそれぞれ開館した。宮城県は六年後を目標に取り組んでいる。山形県の施設には、県内市町村の特産品ショップや県産食材を生かしたカフェなどが設けられ、観光・交流拠点の役割も担っているという。今後の文化施設の在り方を考える上で参考になる。

 新施設を造るためには多額の予算が必要であり、構想から完成までに相当の期間も要する。なるべく速やかに、芸術文化の役割、施設の必要性、機能や規模、財源などを官民で幅広く検討するよう求めたい。将来像を探る作業は、誰もが心豊かに過ごせる持続可能な県づくりにもつながるはずだ。(渡部育夫)