論説

【湯本駅前の再生】温泉街に活力生み出せ(6月28日)

2022/06/28 09:31

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 いわき市は、浜通り最大の温泉街「いわき湯本温泉」がある常磐地区振興に向けた市街地再生整備基本計画の素案をまとめた。老朽化した公共施設をJR湯本駅前に集約して新たな交流拠点を設けるのが柱の一つだ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故、新型コロナウイルスの影響で、市内の観光誘客は厳しい状況が続いている。交流拠点を核に温泉地の活力を生み出す必要がある。

 観光の玄関口となる駅前は、市営天王崎団地二棟の解体によって、景観や安全面の課題は解消されたものの、温泉客らが回遊する魅力は依然、乏しいとの指摘がある。車歩道が分離されておらず、撮影スポットの聖地になりつつある温泉神社や公共浴場といった観光資源の案内標識や説明板の整備も行き届いているとは言い難い。

 いわき湯本温泉の二〇二一(令和三)年度の観光客入り込み数は約十八万五千人で、震災前の約三割止まりとなっている。市が住民に対して二〇二〇年度に実施した調査で、「温泉街に魅力があり満足度が高い」との回答は18%にとどまった。観光客の滞在時間を増やして地域経済を活性化させ、住民の地元への愛着や誇りを醸成するには駅前を中心にした市街地再生は欠かせない。

 交流拠点は、いずれも築四十年余りが経過した市常磐支所、常磐公民館・常磐図書館、常磐市民会館、関船体育館の機能を備える。温泉街の情報や文化を発信し、飲食も楽しめるよう整備するとしている。延べ床面積は決まっていないが、既存の四施設は計九千四百平方メートルあり、駅前に集約するには無理があるだろう。全ての機能を詰め込んだことで逆に中途半端な施設になっては意味がない。的をある程度絞り、盛り込めない機能は市内の別の施設に担ってもらう。そのための移動の利便性を高めるなどの仕組みづくりも重要だ。

 常磐地区は温泉地としての歴史に加え、石炭産業やフラ、サッカーJ3のいわきFCなど、いわき湯本ならではの文化やスポーツが根付いている。図書館については、これらの関連書籍を充実させて情報発信につなげ、住民も観光客も足を運び、にぎわいが生まれるような施設を目指すべきではないか。

 市は市民から意見を募集し、早ければ夏にも基本計画を策定する。着実に財源を確保するとともに、公共施設の跡地利用について住民や観光客の声を反映させ、なるべく早期に魅力ある温泉街を整備してほしい。(円谷 真路)