シン・ウルトラマン(7月3日)

2022/07/03 09:36

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 往時のファンの間では賛否両論飛び交っているようだが、『シン・ゴジラ』に続く『シン・ウルトラマン』のヒットは、須賀川市のみならず福島県にとっても明るいニュースであり、シティ・プロモーションの絶好の機会でもある。

 一九五四年に“特撮の神様”円谷英二らが第五福竜丸被爆事件によって高まる反核運動の最中に“核兵器の落とし子”ゴジラを誕生させたとき、よもや福島県がこれほど核と向き合うことになるとは想像しなかっただろう。以来放射能は歴代ゴジラの重要なモチーフとなったが、今回登場する「禍威獣(怪獣)」も放射性物質を摂取し、あまつさえ地下核廃棄物貯蔵施設を襲おうとする。

 “宇宙”と“破壊力”が不可欠な要素であるウルトラマンにおいて、原子力は必然的に度々登場する。中でも、ウルトラシリーズきっての社会派、『ウルトラセブン』の第十二話「遊星より愛をこめて」は欠番として知られている。

 母星での爆弾実験のため被爆し、放射能で血液が著しく侵されてしまった“吸血宇宙人”スペル星人が、代わりの血液を求めて地球人を収奪しようとする、という話だ。しかし放送から三年後、児童向け雑誌の記載表現に端を発する原爆被害者も巻き込んだ抗議騒動が起こり、結果第十二話の存在自体が事実上抹消されるに至った。

 原発事故後「放射能が伝染る」といったいじめや差別が各地で起きたことを鑑みれば、この事件を原爆の記憶がまだ新しい時代の過剰反応として片付けることはできない。一方で“鬼才”実相寺昭雄らによる反核の思いも込めたアバンギャルドな映像作品が封印された、表現の自由の侵害という点では憂慮に堪えない。ただ、当時大人達が、社会の鏡として子ども番組制作に奮闘していただろうことだけは、心に留めておきたい。

 『ウルトラマン』第十九話「悪魔はふたたび」では、工事現場から三億五千年前のものと推定された液体が入ったカプセルと金属板が発見され、板に書かれた古代文字の解読に成功する。「我々はやっと悪魔の怪獣を捕らえ、液体に変え、地中深く埋める。決して開けてはならない」。しかし、時すでに遅し、開封された液体が怪獣となって地上に出現してしまう。

 フィンランドの世界初の高レベル放射性廃棄物の地下最終処分場「オンカロ」建設を追った映画『十万年後の安全』では、多くの専門家が施設の伝承の仕方について逡巡する。未来の人々と共通言語を持つことが困難なら、メッセージを残すよりもいっそ忘れ去られた方が良いのではないか、と。空想特撮映画ではない、ドキュメンタリー映画の話である。

 原子力施設を襲う禍威獣を今私たちは目の当たりにしている。そしてNATOはウルトラマンではない。将来、透明で無臭の怪物を決して解き放つことが無いよう願うが、それこそが空想なのだろうか。(福迫昌之・東日本国際大学副学長)