論説

【大規模通信障害】危機感強め再発防止を(7月5日)

2022/07/05 08:58

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 携帯電話大手KDDI(au)で発生した大規模通信障害は、幅広いサービスが通信網によって立つ現代社会の危うさを顕在化させた。完全復旧とともに再発防止を徹底すべきなのは言うまでもない。情報通信技術の進展が生活や経済に効率化、合理化の恩恵を与えてきた中、一層の高度化を目指す動きは後退させられない。問題発生時の代替・補完措置を含めた対策を業界として再構築し、共有する必要もあるのではないか。

 音声通話サービス関連機器の交換時に起きた不具合が別のシステムに連鎖し、通話・通信に支障を来したのは最大三千九百万回線を超えた。回線を借りている他の事業者にも波及し、地域気象観測システム(アメダス)のデータ配信が一部で止まった。地方銀行のATMや運送業者の配送システムなど広範に影響が及んだ事態に、網の目の緻密なシステムゆえに一つのほつれによって、機能不全が多岐に一気に広がりかねない弱さを思い知らされた。

 日常の通話を携帯電話に頼る人は少なくない。非常時の緊急通報が滞ったり、炎暑下の安否が確認できなかったり、通信の途絶は生命の危険にも直結する。不安や不便を感じた県民は多いはずだ。

 金子恭之総務相は三日の臨時記者会見で、今回の障害は電気通信事業法上の「重大事故」に当たるとの認識を示した。説明が大幅に遅れるなどしたKDDI側の対応には「利用者目線で見れば十分ではなかった」と批判した。真摯[しんし]に受け止め、補償については、顧客の理解や納得を十分に得る姿勢が求められる。

 携帯電話大手による全国規模の通信障害は過去にも起きている。直近では昨年、タクシーや自動販売機に搭載された電子決算用通信機器のネットワーク工事中に生じた不具合が発端になった。同じ回線を使う携帯電話に影響が広がり、少なくとも延べ千二百九十万人が音声通話やデータ通信不能に陥った。他に派生した点で、今回も同様の構図と言える。教訓が生かされていないとの指摘は、業界全般の信頼にも関わる。携帯電話に限らず、通信に携わる事業者は同じ当事者として、自社システムをしっかり点検すべきだろう。

 政府は行政のデジタル変革を推進している。自治体間で標準化された仕組みの下で、個人情報はどう守られ、不具合で流出する恐れはないのか。こうした懸念は消えていない。情報通信の危機管理は行政を含め、社会全体の問題と捉える意識も強めなければならない。(五十嵐稔)