論説

【参院選後の政治】国民生活を最優先に(7月15日)

2022/07/15 08:42

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 今回の参院選で、自民党が単独で改選過半数を確保し、憲法改正に前向きな「改憲勢力」は国会発議に必要な三分の二以上の議席を維持した。岸田文雄首相は改憲への民意が示されたとして、早期の国会発議に意欲を表明している。改憲の在り方についての議論は重要だが、まずは国民に寄り添い、生活に密着した問題の解決に先行して取り組む必要がある。

 共同通信社が参院選の結果を受けて実施した全国緊急世論調査で、有権者は投票に際して物価高や社会保障への対策を重視していたことが分かった。「物価高対策・経済政策」は最多の42・6%を占め、「年金・医療・介護」(12・3%)、「子育て・少子化対策」(10・4%)、「外交や安全保障(9・6%)」と続いた。「憲法改正」は5・6%にとどまった。

 改憲に関する公約として、自民党は九条への自衛隊明記、日本維新の会は緊急事態条項の制定などを掲げ、それぞれ議席を伸ばした。しかし、世論調査では、与野党の支持者、無党派のいずれも「改憲を急ぐ必要はない」との回答が「急ぐべき」を上回り、慎重姿勢もうかがえた。

 新型コロナ禍の長期化に加え、原材料価格の高騰や急激な円安を背景にした食料品などあらゆる生活物資の値上げに苦しむ国民が、改憲よりも早急な経済対策や社会保障の充実を最優先で求めるのは当然と言える。人口減少や少子化に歯止めをかけ、社会保障の担い手である若年層が生活しやすい環境を充実させるといった懸案は積み残されたままだ。

 わが国を取り巻く安全保障環境は、一九四七(昭和二十二)年の日本国憲法施行当時から大きく変化している。中国は経済成長を追い風に軍事力を増強し、尖閣諸島周辺など日本領海への侵入を重ねる。北朝鮮は日本海に向けた弾道ミサイルの発射実験を繰り返す。ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、日本の経済制裁に対抗するように今月初め、海軍の駆逐艦を与那国島と西表島の間を通過させるなど、極東でも不穏な動きを見せる。日本を取り巻く軍事的な脅威が増しているのは確かだ。

 これらに対応し、自衛隊を含む安全保障体制の検証は避けては通れまい。ただ、改憲勢力といわれる中でも、公明党は必要な規定を付け加える「加憲」を主張するなど、各党の意見は必ずしも一致していない。日本の根幹に関わる改憲を巡っては、国民を含め目に見える丁寧な議論が求められる。(神野 誠)