芸術の力(8月7日)

2022/08/07 09:10

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 三年に一度、瀬戸内海に浮かぶ島々が国内外から熱い視線を集める。今年で五回目を迎えた瀬戸内国際芸術祭だ。十二の島を主な舞台に、各国の作家が制作した彫刻や建築などの現代アートが展示される。年間約百万人が足を運ぶ▼漁業や海辺の風景、古民家集落など島の特色を生かした作品が目を引く。フェリーでの島巡りも楽しい。人気を集める会場の一つに豊島[てしま]がある。自然を取り入れた独創的な美術館や緑輝く棚田、地元食材を使った食堂、島民との交流が来訪者の心を癒やす▼そんな豊島はかつて「ごみの島」と呼ばれた時代がある。外部業者によって大量の産業廃棄物が不法投棄され、国内最大級の産廃事件に発展した。長年の住民運動を経て撤去にこぎ着けた。「海の復権」と銘打ち、島々の再生を掲げる祭典開催のきっかけにもなった。公害と風評に苦しんだ島は活力を取り戻しつつある▼国は映像製作などの芸術を通した交流人口拡大事業を今月中旬から原発事故被災地で展開する。独自に取り組む県内の団体もある。避難指示解除とともに、地域の再生も一歩ずつ進んでいる。芸術という新たな風が「浜の復権」への推進力になってと願う。