論説

【東北勢甲子園制覇】励みに高みを目指そう(8月23日)

2022/08/23 09:05

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 東北六県の願いがついにかなえられた。第百四回全国高校野球選手権大会で、宮城県代表の仙台育英が春夏を通じて東北勢初の優勝を成し遂げた。健闘を心からたたえるとともに、県内野球界への刺激になり、技術向上の弾みになるよう期待したい。

 仙台育英は堅実な試合で勝利を重ね、下関国際(山口県代表)との決勝も投攻守で安定した戦いを見せた。泉崎中出身の湯田統真投手が二年生ながら三試合に登板し、優勝に貢献したのも県民として頼もしかった。

 東北勢が春夏合わせて十二度も決勝に進みながら、一度も優勝旗を手にしていないことが、これほど繰り返し取り上げられた大会はなかったのではないか。仙台育英と聖光学院との東北勢初の準決勝対決が組まれたことで、ひときわ大きな話題になった。五十一年前の一九七一(昭和四十六)年夏の甲子園の決勝で惜敗し、優勝を逃した磐城にも光が当たった。県内をはじめ東北の野球関係者やファンにとどまらず、全国が注目した中での日本一は、高校野球史にしっかりと刻まれる。

 聖光学院を含め、四強入りしたどのチームにも優勝経験がなかったことも特筆される。強豪と対してひるまず、厳しい練習に裏打ちされた自分自身とチームの力を信じて挑めば、先は開ける。練習環境の優劣を問わず、ひた向きに臨めば優勝のチャンスはあるという高校野球の意義や醍醐味[だいごみ]を教えてくれた大会でもあった。日大三(西東京)、横浜(神奈川)、敦賀気比(福井)と全国制覇の実績のある相手に競り勝ち、快進撃を続けた聖光学院が、それを体現した。野球に打ち込む県内の小・中学、高校生らの励みになったに違いない。

 東北勢が優勝から遠ざかっていたのは、降雪期に野外練習が制限されたり、潜在力を秘めた選手が他地域の強豪校に散逸したりすることなどが背景にあるとされる。それを克服できる可能性を感じたのが、豪雪の地からこの春のセンバツに、二十一世紀枠で初出場した只見の堂々たる活躍ぶりだった。「全力疾走」をモットーに全員野球で歴史に残る一点を挙げた。

 東北地区の指導者は結び付きが強く、定期的に練習試合をしたり、練習方法などの情報交換を続けているという。切磋琢磨[せっさたくま]し、共に高みを目指す関係を一段と強めていきたい。特定の高校に偏らず、全体の底上げにつながるような幅広い連携づくりも進めてほしい。優勝旗が「白河の関」を越えた最も大きな意味は、そこにある。(五十嵐稔)