論説

【子どもの肥満傾向】改善へ連携強めて(8月29日)

2022/08/29 09:14

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 県内の子どもの肥満傾向が改善されていない。夏休みが終わり、学校生活が始まった。長期の休み明けは体調を崩しやすいとされる。健やかな成長に向け、家庭や学校などで基本的な生活習慣を改めて身に付けさせる必要がある。

 文部科学省は毎年、全国の五歳から十七歳までを対象に、年齢・男女別の学校保健統計調査を行っている。県内では二〇二一(令和三)年度、百六十五カ所の幼稚園、小中学校、高校を抽出し、計一万三千六百七十六人の発育状況を調べた。標準体重より20%以上重い「肥満傾向児」の割合は、男女ともに全ての年齢で全国平均を上回った。全年齢となったのは二〇一六(平成二十八)年以来、五年ぶりだった。

 県教委によると、肥満傾向児の割合は西日本に比べて東日本が高く、食文化や気候、風土なども要因に挙げられるという。肥満は一般的に糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を発症するリスクを高めるともいわれる。本県は成人のメタボリック症候群の割合が高く、全国でも常にワースト上位にある。幼少期や成長期の段階から予防意識を持つことは重要だ。日常生活の場や学校の授業などを通じて分かりやすく伝えてほしい。

 肥満傾向児の問題は以前から指摘され、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う生活環境の変化をきっかけに一段と深刻化した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出自粛などが拍車をかけている。

 県教委は二〇一八年に「ふくしまっ子児童期運動指針」を打ち出し、各学校に実践を促している。運動の苦手な子どもでも気軽に取り組めるよう、朝の会や給食、清掃などのわずかな時間に、無理をせず体を動かせるこつを紹介している。学校単位で競う全県規模の「なわとびコンテスト」など、児童の励みになっている例もあり、効果が期待される。

 指針は新型コロナ禍以前に策定されたため、現状とのずれを指摘する声も聞かれる。マスクを着けたままでもできる遊びや軽運動などの具体例も盛り込んでほしい。ウィズコロナを見据え、指針の見直しも検討すべきだろう。

 肥満の改善に向けては、規則正しい生活、適度な運動、バランスのよい食生活を続けることが大切だ。実践し、学ぶ場は家庭や学校だけではない。スポ少や公民館の活動など、さまざまな機会を捉え、家庭と学校、地域が連携しながら子どもの健康を後押ししていきたい。(小林和仁)