
新型コロナウイルス感染症が感染症法上、危険度が2番目に高い「二類」相当とされている現状について、福島民報社は福島県内59市町村長にアンケートを実施した。季節性インフルエンザと同等の「五類」への引き下げが「必要」としたのは14市町村長(23・7%)、「現時点では必要ない」としたのは13町村長(22・0%)だった。「どちらとも言えない」が最多の32市町村長(54・2%)に上った。感染状況や政府方針が見通せない中、見直しについての態度を決めかねている実態が明らかになった。専門家は「政府は利点と欠点の両面の情報を積極的に提示し、世論の関心を高めるべきだ」と指摘する。
最多の「どちらとも言えない」と答えた理由は「感染状況が見通せない」が12市町村長で最多となり、「治療薬の開発状況を踏まえて判断すべき」が9町村長。11市町村長は「その他」と答え、このうち木幡浩福島市長は感染者の全数把握の見直しは必要としつつ「単純に五類に変更すればいいものではない」とし、「今後の感染拡大もにらんだ体制を早急に整備すべき」と訴えた。山本育男富岡町長は「専門家の意見を踏まえて判断すべき」とした。
見直しが「必要」とした市町村長に理由を複数回答で尋ねたところ、「感染者の全数把握などによる医療機関、保健所の負担が大きい」が13市町村長で最も多く、「重症化リスクが下がってきている」が9市町村長、「社会経済活動を維持、活性化していく必要がある」が8市町村長で続いた。「その他」として、品川萬里郡山市長は「公費負担の継続は必要」とし、検査・治療費を全額公費で賄っている二類相当と同様の対応も求めた。
見直しの時期は「できるだけ早く」が9市町村長で最多。現在の「第7波以降」は4市町長だった。「その他」の舟木幸一昭和村長は、市町村別の全感染者数の把握は必要とした上で「医療機関や保健所の負担が極力少ない方法で届け出ができる仕組みが構築された時点で速やかに見直してほしい」とした。
「現時点では必要ない」と回答した町村長の理由(複数回答)は「治療薬の開発、診療体制の整備などを優先すべき」が12町村長で最も多く、「感染拡大が続く中、対策を緩和するべきではない」が10町村長、「分類にとらわれない対応が必要」が4町村長だった。適切な見直しの時期は11町村長が「治療薬の実用化が進んだ後」を選択した。
福島医大医学部公衆衛生学講座の安村誠司教授は多くの市町村長が態度を決めかねている現状を「専門家の意見も分かれている中、動向を注視して進めるべきとの姿勢の表れではないか」と分析。「国民が見直しの是非を考えるための情報が不足している」とし、政府による積極的な情報提示の必要性を訴えている。