論説

【日本人拉致問題】関心を持ち続けよう(9月5日)

2022/09/05 09:00

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 当時の小泉純一郎首相と北朝鮮の金正日総書記が国交正常化を目指し、日朝平壌宣言に署名して十七日で二十年を迎える。しかし、北朝鮮による日本人拉致問題は膠着[こうちゃく]状態が続く。県人も拉致被害にあった疑いがある。一日も早い解決に向け、県民一人一人が関心を持ち続けていきたい。

 小泉氏が現職首相として二〇〇二(平成十四)年九月に初めて北朝鮮を訪問した際、金氏はそれまで否定していた日本人拉致を認めて謝罪した。署名から一カ月後、蓮池薫さんら五人が帰国した。二年後の二〇〇四年には、蓮池さんの子どもら家族五人も日本に戻った。それ以降、核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮と日米韓の対立が先鋭化し、国交正常化どころか、拉致問題は何ら進展が見られない。

 日本政府は拉致被害者として十七人を認定している。他にも八百七十三人を拉致の可能性を排除できないとして情報収集や捜査・調査を継続している。北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会福島の会(救う会ふくしま)によると、この中には会津若松市の蒔絵[まきえ]師や、南相馬市の会社員ら本県関係者も含まれるという。拉致は、本県にとっても重要な問題と再認識する必要がある。

 時間の経過とともに、帰国を待つ家族は失意のまま亡くなっていく。一九七七(昭和五十二)年十一月に新潟市で失踪した横田めぐみさん=当時(13)=の父滋さんは、最愛の娘と四十年以上も会えないまま、二〇二〇(令和二)年六月に死去した。滋さんは被害者家族会初代代表として救出活動の先頭に立ってきた。十九年前に福島市で講演した際には「たくさんの人が関心を持ってくれることが大きな力になる。引き続き関心を持って見守ってほしい」と県民に呼びかけた。その言葉を忘れてはならない。

 拉致問題は北朝鮮にとって、日本との外交交渉を有利に運ぶ切り札でもあり、容易には手放さないだろう。ただ、あきらめたり、安易に譲歩したりすれば、相手の思うつぼになってしまう。ウクライナ情勢や、対中国問題など重要な外交課題は山積しているとはいえ、人道上看過できない拉致問題をおろそかにしてはならない。政府は解決の糸口を見いだす努力を一段と強めてほしい。

 救う会ふくしまは、早期解決に向けた署名活動や講演会の開催など地道な取り組みを重ねてきた。「被害者を絶対救出する」という強い思いを持ち続け、支援活動を支えていこう。(神野誠)