気象庁長官の私的諮問機関である火山噴火予知連絡会(予知連)は、これまで研究者を中心にしていた活火山の活動状況や警戒レベルの判断を、来年度から気象庁が主体で行うよう改編する。気象庁の監視体制が充実したことなどを背景に、火山学者らが噴火に備えた研究に注力できる体制に見直す。県内には常時観測火山が四山あり、警戒が続く。防災体制の強化につながるよう期待する。
予知連は国の火山噴火予知計画に基づき、一九七四(昭和四十九)年に設置された。学識経験者や関係機関の専門家二十五人で構成する。火山活動を総合的に検討し、噴火の可能性について統一見解を示すなど、火山対策の中核的役割を担っている。
このたび提言された報告書に基づき、現体制が三つの検討会(仮称)に再編される。「火山噴火災害検討会」は、大規模な火山災害の発生が懸念される場合、研究者と関係機関が噴火の時期や規模などを科学的に分析する。「火山活動評価検討会」は活動が比較的落ち着いている山の状況を確認し、「火山調査研究検討会」は個々の山のデータを共有して予知に生かす。
予知連が選定した五十カ所の常時観測火山に吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳が含まれている。地震計や監視カメラ、空振計などが設置され、気象庁が二十四時間体制で観測している。いずれも「活火山であることに留意」という噴火警戒レベル1の段階にある。
新体制では気象庁が中心となり、活動状況を踏まえて警戒レベルを継続するかどうかを見極める。噴火の兆候があれば、行政や災害科学の専門家を加え、被害を想定した対策を指示する。避難行動など迅速な対応に生かすには地元の自治体、住民との連絡体制も強める必要があるだろう。
噴火に比べて発生頻度が高い地震を巡り、国は阪神大震災を機に調査研究を一元的に推進する地震調査研究推進本部を設置し、地方と連携した防災対策を進めている。火山は一度噴火すれば、広範囲にわたって被害を及ぼす。御嶽山が二〇一四(平成二十六)年に噴火した当時、噴火警戒レベルは1で、予知の難しさを浮き彫りにした。国の特別機関として火山調査研究推進本部のような組織づくりも検討すべきではないか。
予知とは別に災害への普段の備えは欠かせない。鎮まっている状態であっても活火山であることを認識し、市町村が策定したハザードマップで被害規模や避難所などを確認しておきたい。(安島 剛彦)