論説

【国際自転車ルート】指定へ連携強化を(9月9日)

2022/09/09 08:58

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 いわき市を中心にした浜通り地方の市町村でサイクリングを楽しめる環境が整いつつある。太平洋沿いは平たんな道が多い。内陸の阿武隈山系は勾配があり、脚力に応じた魅力あるルートを設定できる。国のナショナルサイクルルートの指定に向け、浜通りの関係機関が連携して早期にモデルを示し、被災地の活性化につなげる必要がある。

 ナショナルサイクルルートは路面表示や案内看板などの自転車通行空間の整備状況をはじめ、自転車修理施設や宿泊施設が設けられているかどうかを基に選定される。現在、茨城県の「つくば霞ケ浦りんりんロード」など国内に六カ所あり、多くの自転車愛好家が訪れる。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば外国人の需要も見込める。

 いわき市は沿岸部の総延長五十三キロを「いわき七浜海道」として整備するとともに、公共施設の新舞子ハイツに休憩所や貸自転車などの機能を持たせた。県は市内の観光施設や宿泊施設など三カ所に修理拠点、民間は貸自転車店をそれぞれ設けた。ただ、指定を受けるには原則百キロ以上の距離が必要で、市だけで対応するのは容易ではない。

 内田広之市長は二月定例議会で指定を目指す考えを示している。浜通りの十三市町村などで構成するうつくしま浜街道観光推進会議の今年度の計画には、広域サイクリングルートを設ける新規事業が盛り込まれた。しかし、新型コロナの影響はあろうが、協議の場が設けられるなどの具体的な動きは見えてこない。

 沿岸部と阿武隈山系の中山間地をつなげば総延長三百キロ程度に達する。いわき市から双葉郡にかけては東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興、南相馬市は相馬野馬追といった侍文化、阿武隈山系の田園地帯は日本の原風景に触れられるルートを描けるはずだ。相双地区でも自転車で立ち寄れる施設整備が計画されている。まずは、いわき市と広域自治体の県が先頭に立ち、ルートの選定に向けて市町村が意見を交わす機会をつくるよう求めたい。

 帰還困難区域の通過方法も大きな課題となる。列車に自転車を乗せる手法や迂回路[うかいろ]設定など避難指示解除の時期を見据えた多様なルートづくりが欠かせない。自転車ならではの観光地や宿泊施設の選定、震災と原発事故のアーカイブ施設への誘導、ガイドの育成など各市町村が準備しなければならないことは多岐にわたる。並行して自転車で地域の特色に触れる企画などを随時展開し、国の指定を実現させてほしい。(円谷真路)