東日本大震災・原発事故

全市町村が居住可能に 葛尾、大熊、双葉復興拠点の避難解除【震災・原発事故11年6カ月 福島県】

2022/09/11 17:10

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双葉町内で業務を再開した町役場新庁舎で執務する職員=9月5日
双葉町内で業務を再開した町役場新庁舎で執務する職員=9月5日
7月に開所した大熊インキュベーションセンター。新産業創出を目指し、県内外の企業・団体が研究、開発の拠点としている
7月に開所した大熊インキュベーションセンター。新産業創出を目指し、県内外の企業・団体が研究、開発の拠点としている
葛尾村の復興拠点の避難指示が解除され、開放されるゲート=6月12日
葛尾村の復興拠点の避難指示が解除され、開放されるゲート=6月12日

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11日で11年半となる。原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が福島県葛尾村で6月12日、福島県大熊町で6月30日にそれぞれ解除された。唯一、全町避難が続いていた福島県双葉町は8月30日に解除され、避難区域が設定された全ての市町村で住民が暮らせるようになった。各自治体は住民帰還や移住定住の施策に力を入れている。


■双葉町 役場新庁舎が開庁

 双葉町の帰還困難区域のうち、復興拠点の避難指示が8月30日に解除され、原発事故から11年5カ月を経て、ようやく住民が居住できるようになった。

 解除されたのは、JR双葉駅周辺など町の中心部約555ヘクタール。2020(令和2)年に先行解除された区域も合わせ、町の総面積の約15%に当たる約775ヘクタールが居住可能となった。町の人口は7月末現在、5574人。約6割に当たる3574人が住民登録している。

 今後は双葉駅を中心としたまちづくりが進む。駅東側には町役場新庁舎が開庁し、5日から業務を開始した。商業施設などにぎわい創出に向けた動きも本格化する。駅西側には災害公営住宅と再生賃貸住宅の整備が進む。

 復興拠点外には現在も2千人が住民登録している。住民からは全域除染を強く求める声が上がる。町は今後も全域除染と解除に向けた具体的な施策の明示などを国に求めていく。


■浪江町

 浪江町の人口は7月末現在、1万5805人。町内に居住しているのは7月末現在で1903人となっている。

 室原、末森、津島の各地区に設けられた復興拠点で9月1日に住民の準備宿泊が始まった。帰還に向けた動きが本格化する。

 町の大部分は帰還困難区域となっており、町内には立ち入り規制を示す看板も少なくない。町は来年3月の復興拠点の避難指示解除を目指している。


■大熊町 新産業創出目指す インキュベーションセンター開所

 大熊町のJR常磐線大野駅周辺を中心とした復興拠点の避難指示が6月30日に解除された。

 町は住宅団地の整備など大野駅周辺の再開発を進め、新たな産業や人の流れを生み出して住民の帰還につなげる。7月には大野小校舎を再利用し、起業家らを支援する「大熊インキュベーションセンター」がオープンした。新産業創出を目指し、県内外の企業・団体が研究、開発の拠点としている。

 同駅西側には産業交流施設と商業施設を設け、2024(令和6)年12月の開所を目指している。

 町の人口は1日現在、1万51人。町内に居住しているのは1日現在で941人となっている。


■葛尾村 野行地区の集会所修繕 宿泊交流施設を整備

 葛尾村唯一の帰還困難区域となっている村北東部の野行地区では、6月12日に復興拠点の避難指示が解除された。

 村の人口は1日現在、1314人。村内に居住しているのは1日現在で466人となっている。

 野行地区では、避難指示解除を見据え、村が復興拠点内の集会所を修繕し、宿泊交流施設を整備した。避難指示解除後に住民が集まる機会をつくり出し、住民の交流促進に力を入れる方針だ。

 地区内では農業が盛んだった。昨年、コメや野菜の試験栽培を始めた。将来の営農再開に向け、地元の生産組合や営農組合が取り組んでいる。


■広野町

 広野町の7月末現在の人口は4706人で、町内居住者は4247人。

 町は県外からの移住定住を促進するため、「広野町移住定住『共生のまちづくり』促進プラン」を策定した。震災と原発事故発生後に町を支援してきた各団体の関係者で移住定住ネットワークを構築する。人口約5千人から、2030年に6千人を目標に掲げる。

 旧広野幼稚園舎を改修した町文化交流施設「ひろの未来館」が4月に開所した。


■川内村

 川内村のワイン醸造施設「かわうちワイナリー」で醸造した初の村産ワインが3月に完成した。農業振興と観光振興を目指す。

 高齢者の就業機会確保と生きがいづくりを目的に4月、「かわうちゴールド人材センター」を設立した。

 かつて村のにぎわいの中心だった「町分地区」を再生するため、景観づくり事業を進めている。

 村の人口は8月1日現在、2385人で、1973人が戻っている。


■田村市 都路町

 7月31日現在の田村市民の避難状況動向調査によると、同市都路町の人口は2049人で、帰還率は92・1%となっている。

 農業再興に向けた取り組みが進展する。2021(令和3)年9月に地見城ライスセンターが完成したのに続き、今年5月には古道地区に米流通合理化施設とライスセンターができた。

 アウトドア施設「グリーンパーク都路」はキャンプの人気が高まり、にぎわいづくりの拠点となっている。


■南相馬市 小高区

 南相馬市小高区の避難指示は2016(平成28)年7月に帰還困難区域を除いて解除された。

 7月末現在、3827人が暮らしている。原発事故発生前の住民基本台帳に基づく人口1万2842人の約3割となっている。

 市は営農再開と帰還促進を目指し、市小高園芸団地を建設、JAふくしま未来に運営を委託している。一部施設が完成し、4月から水稲の育苗やキュウリ栽培に活用している。


■避難区域 富岡町

 富岡町は夜の森地区を中心とした復興拠点約390ヘクタールの2023(令和5)年春の避難指示解除を目指している。立ち入り規制が今年1月に緩和され、12年ぶりに区域内の桜並木を観賞できるようになった。4月には多くの人が訪れた。

 富岡二小跡地に整備した「共生サポートセンターさくらの郷」が4月に開所し、町民の福祉・介護サービスの拠点となっている。

 8月1日現在の町の人口は1万1871人で、町内居住者は2026人。


■避難区域 楢葉町

 楢葉町に6月、移住定住の相談窓口や交流ラウンジを備えた施設「CODOU(コドウ)」が開所した。JR常磐線木戸駅の西側にあったダンススクールを改修した。

 町は農業再生に向けてサツマイモの生産に力を入れている。7月、共同育苗施設が完成した。津波被害にあった岩沢海水浴場は今夏、12年ぶりに再開され、にぎわった。

 7月末現在の人口は6657人で、町内居住者は4252人。


■川俣町 山木屋地区

 川俣町山木屋地区の人口は8月1日現在で680人。居住者は334人となっている。

 農業復興を後押しする穀類乾燥調製施設が完成した。JAふくしま未来が運営を担い、約60ヘクタール分のコメの乾燥調製ができる。山木屋地区を中心に、被災地で生産された穀類を受け入れる。

 「復興の花」として特産化が進んでいる熱帯アメリカ原産の「アンスリウム」の出荷本数は年々増加し、認知度が高まっている。


■飯舘村

 飯舘村の人口は8月1日現在、4918人。居住人口は1503人となっている。

 帰還困難区域の長泥行政区の復興拠点は、2023(令和5)年春の避難指示解除を目指している。準備宿泊は23日に開始される。村は12日から、希望者の事前登録を受け付ける。

 「居住促進ゾーン」では短期滞在や交流を目的とした施設の建設が進んでおり、住民が帰還した際の拠点づくりが加速している。


■復興拠点外 除染範囲「見える化」へ 自民、公明両党の「加速化本部」が提言 大熊・双葉で先行

 東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち復興拠点外の避難指示解除に向け、政府は2020年代に希望者全員の帰還を目指す方針を昨年8月に決定している。住民の帰還意向を個別に把握し、帰還に必要な場所を除染する考えで、現在は大熊、双葉両町で帰還意向調査を進めている。

 政府は「たとえ長い年月を要するとしても将来的に全ての避難指示を解除」する方針を打ち出している。ただ、復興拠点から外れた地域で、帰還意向のない住民の土地や家屋の取り扱い、除染の手法などは明確になっていない。

 このため、自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部は政府への第11次提言に、復興拠点外の避難指示解除に向けた具体策として、除染範囲と手法を地図上に整理する形で「見える化」しながら進める対応を盛り込んだ。大熊、双葉両町の一部地域では2023(令和5)年度に先行除染を開始するよう求めている。先行除染は2024年度以降に実施する除染から避難指示解除までの一連の取り組みのモデルとするため、居住地の状況などに応じた類型化も提案している。

 与党の提言が政府の復興施策の根幹を成してきた経緯があり、政府は第11次提言を受けて新たな方針を示すとみられる。