論説

【国交正常化50年】日中関係に民の力も(9月22日)

2022/09/22 09:12

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 日本と中国の国交が回復して29日で50年を迎える。日中間の緊張が高まる中、岸田文雄首相は節目を契機にした中国との対話に前向きな姿勢を示している。しかし、先行きは見通せない。外交が行き詰まっている局面であればこそ、草の根の結び付きを一層強める必要がある。

 県内在住の中国人は3千人を超え、国別で上位を占める。留学生や研修生が各地の大学、企業、病院などで高度な知識や技術を学ぶ。受け入れ側は中国の国柄や文化に触れ、相互理解を深めてきた。

 県によると、県内8市町村が中国の都市と友好、姉妹関係にある。いわき市は、石炭産業を縁に遼寧省撫順市と1982(昭和57)年に提携し、小中学生による書写交流を続けている。

 会津若松市は、旧陸軍歩兵65連隊(白虎部隊)が駐屯した湖北省荊州市と1991(平成3)年に友好関係を結んだ。須賀川、二本松、楢葉、富岡、西郷、泉崎の6市町村も歴史や産業などで通じる都市とのつながりを持つ。国との関係に隔たりはあっても、本県にとっては身近な隣人と言える。新型コロナウイルスの影響で活動が停滞しているとしても、行政や民間の絆は維持していきたい。

 2020(令和2)年の本県の輸出総額は1454億円で、中国は4割強の655億円に達する。医薬品は最大の輸出先であり、本県経済も中国を抜きには語れない。東京電力福島第1原発事故に伴う輸出規制とも向き合わねばならない重要な国でもある。

 中国海警局の船が尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返し、偶発的な衝突への懸念が強まっている。日本を射程に収めるミサイルを多数配備し、挑発を重ねる行為は看過できない。一方で、国と国はにらみ合っていても、国民同士が必ずしもいがみ合っているわけではない。日中間の亀裂に連鎖して、友好を願う両国の民意を後退させてはならない。緊張緩和の機運がそがれてしまう。

 台湾有事を見据えて政府は軍備の増強を目指している。ただ、ロシアのウクライナ侵攻は軍事的圧力だけで安定は保てない現実を突き付けた。

 孔鉉佑[こうげんゆう]駐日大使は先の記念シンポジウムで、中日は運命共同体であるとして、民間交流の促進を強調した。経団連の十倉雅和会長は緊密な意思疎通が重要と説いた。外交とは別に、本県を含め、日中の国民をつなぐ根が緊張をほぐし、有事を食い止める最後のとりでになると信じて、再正常化への道を民の立場で探っていきたい。(五十嵐稔)