【只見線全線再開通 線路の行方(上)】福島県など沿線盛り上げ躍起 利用客どう増やす

2022/09/29 09:40

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JR只見駅前にあるどぶろくの製造所兼店舗で準備を進める脇坂代表社員
JR只見駅前にあるどぶろくの製造所兼店舗で準備を進める脇坂代表社員

 JR只見線は10月1日、11年ぶりに全線再開通する。沿線住民や鉄道ファンは復活を喜び、活性化や観光振興への期待が高まる。一方、福島県と会津地方の17市町村が維持管理費を負担するため、利用客を増やし経済効果をどう生み出すかが問われている。路線を持続させるための課題を探る。


 只見線は2011(平成23)年7月末の新潟・福島豪雨による被災で不通区間が生じる前から利用客数の減少が課題となっていた。

 JR東日本によると、不通となっている会津川口駅(金山町)-只見駅(只見町)間の利用状況を示す平均通過人員は1987(昭和62)年度が1日当たり184人、20年後の2007年度が63人とほぼ3分の1に減少した。かつては通学や通勤などで住民らが利用していたが、人口減少や交通環境の変化などが影響したとみられる。

 近年は沿線に広がる眺望が評判を呼び、奥会津を訪れる訪日客(インバウンド)が急増。只見川電源流域振興協議会によると、2018年、奥会津7町村に宿泊した外国人は延べ2153人で前年より882人増えた。明るい兆しもあったが、コロナ禍のためインバウンドも激減した。

 利用客減少の主な要因となっている少子高齢化などの課題は解決されないままで、コロナ禍も収束していない。JR東日本が7月に公表した赤字路線の中には只見線も含まれている。

 路線を存続させるには継続的な利用客確保を図る必要がある。県や沿線自治体、住民は一時の“全線再開通バブル”に終わらせないよう躍起になっている。

 県や沿線自治体などでつくる只見線利活用推進協議会は利活用計画で「日本一の地方創生路線を目指して」と掲げる。観光客を呼び込むための企画列車やツアー、子どもたちが体験学習できる学習列車の運行、美しい眺望が広がる景観整備などを通し、首都圏など県外からの利用を増やそうとしている。

 県は8月にJR会津若松駅内に只見線管理事務所を開設。全線再開通に合わせて10月から11月まで、会津鉄道(本社・会津若松市)の観光列車「お座トロ展望列車」を只見線で運行する。

 地元も盛り上げに工夫を凝らす。只見町の合同会社ねっかの脇坂斉弘代表社員は只見駅前の只見線広場に整備されたユニットハウスに、町産米で造ったどぶろくを提供する製造所兼店舗を開設し、10月1日に開店させる。「利用客だけでなく地元の人も楽しめるようなエリアにしたい」と話す。

 町は観光地の磨き上げを図る。只見駅近くにある縁結びのパワースポットの三石(みついし)神社周辺の遊歩道を整備した。写真撮影スポット「叶津川橋梁(きょうりょう)ビューポイント」に丸太を敷いて登りやすくした。いずれも住民が一緒に作業した。

 金山町は誘客のために会津川口駅前にレンタカーを置く計画だ。観光タクシーはあるが、交通手段を増やすことで利用客が地域を巡る機会を生み出す。

 只見線活性化対策協議会長の古川庄平会津坂下町長は「沿線自治体の知恵と努力で何とか永続的な存続を目指したい」と語る。地域の取り組みを一体的に発信し、連携を強められるかが利用客増につなげる鍵になる。