論説

【マイナカード】利便性高める努力を(9月30日)

2022/09/30 09:36

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 マイナンバーカードの普及が政府の思惑通りに進んでいない。現状では使い道が乏しく、個人情報の漏洩[ろうえい]など安全性への不安が主な要因とみられる。政府は自治体を財政面で締め付け、申請の拡大を目指す新たな方策を打ち出したが、効果には疑問符がつく。最優先は、各省庁が一体で普及策に取り組むとともに、カードの利便性を上げることではないか。

 政府が検討している新たな方策は2023(令和5)年度に創設される見込み。自治体に配分予定の「デジタル田園都市構想交付金」の一部について、取得率が平均を下回る場合は申請できない仕組みとする。本県の8月末時点のマイナンバーカードの交付率は42・2%で、全国の47・4%より5・2ポイント低い。59市町村のうち全国平均を下回るのは51市町村に上る。

 政府の仕組みが導入されれば、県はじめ県内のほとんどの市町村が影響を受ける。政府は普及に向けた努力を促す効果を狙っているようだが、果たしてこうした異例の手法が飛躍的な取得率向上に直結するだろうか。「罰則」のように受け止める自治体の反発も予想される。取得時に最大2万円分のポイントが得られる現在の促進策とともに、手詰まり感は否めない。

 マイナンバーカードの用途は各省庁に及んでいる割には、総務省やデジタル庁だけが懸命に旗振り役を務めているだけで、他省庁が自分事として普及に当たっていない印象を受ける。厚生労働省は子育てや介護の行政手続きができるマイナポータルをもっと宣伝すべきだし、文部科学省は学校現場などでの理解活動を展開すべきだ。それぞれにやれることがまだまだある。

 さらに、利用者側に立てば利便性の向上は欠かせない。県内のある町の女性は、マイナンバーカード取得に合わせて健康保険証を返納した。カードを使って病院を受診しようとした際に以前の保険証の提示を求められ、診察を受けられなかったという。カードは「マイナ保険証」と呼ばれる健康保険証機能を加えられるが、県内で対応する機器を導入した医療機関や薬局は約3割という。

 「マイナ保険証」は診察歴や薬の処方歴などがまとめられ、医療機関、患者の双方に多くの利点がもたらされる。カードに対応できる機器導入に、さらに力を入れなければ、利用者の不便が増す結果となってしまう。自治体に財政的な圧力をかけるばかりでなく、さまざまな課題を総合的に解決していく姿勢が求められる。(安斎 康史)