論説

【県産日本酒輸出】風評払拭の旗頭に(10月7日)

2022/10/07 09:32

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 昨年度の県産品輸出額は13億7500万円で、初めて10億円を突破した。日本酒などのアルコール類の輸出額は7億7300万円で、前年比177%と大幅に伸びたのが主な要因となっている。全国新酒鑑評会で金賞受賞数9連覇を達成した日本酒を旗頭に、県産品の海外での認知度をさらに高め、風評の払拭につなげたい。

 県によると、2012(平成24)年度に9400万円だった県産アルコール類の輸出額は毎年順調に伸びてきた。2019年度は7年前の5倍以上に当たる4億8300万円となった。新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に流通が滞っていた2020年度は、前年に比べて減少したものの、昨年度は米国やフランスなどでの需要が回復し、初めて7億円を超えた。特に米国では県産日本酒の知名度が向上し、日本食レストランなどの飲食店や小売店での扱いが拡大している。リキュール類と合わせたアルコール類の輸出額は3億4300万円で最大の取引国となっている。

 日本貿易振興機構福島貿易情報センター(ジェトロ福島)は先月、米国の中でも最大の和食レストランの数を誇るカリフォルニア州内のサンフランシスコで日本酒などの輸出商談会を初めて開催した。県内五つの蔵元が現地のバイヤーと意見交換し、「おいしかったと聞き安心した」「ブランド価値を高めるよう伝え方を磨きたい」などと輸出に向けた手応えをつかんだという。昨年までの2年間はコロナ禍でオンライン開催となったが、米国への初輸出に結び付けた蔵元や業績を伸ばした企業もあった。今後も県内の蔵元の輸出先を広げるための後押しを継続してほしい。

 海外での日本酒人気は着実に高まっている。農林水産省によると、昨年度の日本酒輸出額は、過去最高の401億円に達した。前年度に比べて66・4%の大きな伸びを見せた。輸出先のトップは中国で、米国、香港、シンガポールなどが続く。ただ、中国は東京電力福島第1原発事故発生以降、本県を含む東日本の10都県の食品輸入を規制している。最大の市場である中国に門戸を開いてもらうためにも、政府には県産食品の安全性を示した上で、粘り強い交渉を続けてもらいたい。

 記録的な円安は、各蔵元の輸出には追い風になる。一方で、燃料費高騰による経費の増大が経営を圧迫している。身近なところでは、県民一人一人が県の「オールふくしま買って応援キャンペーン」などに積極的に協力し、県産酒を支えていこう。(神野誠)