論説

【通園バス置き去り】再発防止へ対策強化を(10月17日)

2022/10/17 09:13

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 静岡県の認定こども園の通園バスに女児が置き去りにされ死亡した事件を受け、本県が保育所や幼稚園などを調査した結果、重大事故につながりかねない複数の事例が確認された。施設をはじめ、関係機関は安心して子どもを預けられる環境づくりに一段と力を入れる必要がある。

 県によると、県内の保育所、認定こども園、幼稚園の全874施設の中で、送迎バスを運行しているのは197施設で、このうち43施設で問題事例があった。ある施設では登園した園児を降ろし忘れた。園児の不在に気付いた職員がバスの中で寝ていた園児を見つけ、大事には至らなかったという。降園時にバスに乗る予定だった園児を乗せずに発車したり、バスを利用しない園児を乗車させたりする例もあった。

 送迎に関する安全管理マニュアルは、66%に当たる130施設が作成していた。さらに、乗降時に園児の座席や人数確認、職員間での情報共有は全施設で行っていると回答したにもかかわらず、事故になりかねない事案が起きた。県は調査結果を踏まえ、市町村と連携して全施設を実地調査するとしている。安全体制をきめ細かく確認し、指導に生かしてほしい。

 静岡県の認定こども園はルールを設けながら、降車時に人数確認を怠り、休みの可能性があると思い込んで保護者に連絡しなかったなどのミスが連鎖した。マニュアル作成だけでは不十分で、いかに実効性を持たせるかが重要だ。昨年7月に同様の事件が発生した福岡県は、独自の指針を設けて、運用ルールが職員に周知されているかなどを抜き打ちで監査し、点検している。県内でも、このような手法を取り入れてはどうか。

 政府は全ての通園バスに来年4月から安全装置の設置を義務化し、違反した施設は業務停止とする。安全装置には、座席の状況確認を促すブザーや、取り残された子どもを検知するセンサーなどがある。政府は20万円を上限に設置費用の9割を補助する方向で、今年度第2次補正予算案に必要経費を計上する。国の動向に合わせ県も速やかに対応する方針だ。

 県私立幼稚園・認定こども園連合会は、送迎バスの安全運行などに重点を置いた危機管理の研修会を11月に開き、各施設に注意を促していく。子どもが車内に閉じ込められた際に、クラクションを鳴らす訓練を始めた幼稚園もある。それぞれの施設の取り組みを共有しながら、子どもの命を共に守る仕組みづくりも求めたい。(安島剛彦)