相馬農高魂(10月29日)

2022/10/29 08:41

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 「東京電力福島第1原発事故で途絶えた豊かな田園風景を復活させ、魅力を広めたい」。南相馬市の農業法人で働く22歳の女性は、社内でクラウドファンディングを始め、資金を集めて交流や農業体験イベント、SNSを使った情報発信を計画する▼祖父母の畑仕事を手伝ううちに農業に興味を持った。震災と原発事故発生後は荒れてゆく農地を見るのがつらかった。進学した相馬農高で、古里の農業再生に向けた動きを知り、憧れるようになった。卒業後すぐに就職した会社は、まさに夢をかなえる職場だった▼母校の後輩たちは、震災の津波で甚大な被害を受けた萱[かい]浜[はま]地区の伝統料理、大根と芋がらを炒めた「ベンケイ」を後世に伝えようと、研究に力を入れている。地区内に広がる福島ロボットテストフィールド(ロボテス)にちなみ、ベンケイを具にした今川焼き風の「ロボ焼き」を新たに考案した▼古里の味を発展させた意欲作は29、30日にロボテスで開催される「ロボテス縁日」でお披露目される。生徒が作った野菜や加工品も、最先端の研究の場に並ぶ。農業再興に燃える相馬農高魂は先輩にも、後輩にも脈々と受け継がれ、今年も被災地の秋に輝く。