あの震災の時、学生たちは卒業式のリハーサルで身につけていたキャップとガウンを着たまま、キャンパス広場に避難していた。そこに学童保育所の小学生たちも避難してきた。学生は自分たちも不安なのに、泣いている小学生を自分のガウンの中に包み込み、「大丈夫だから」と安心させていた。その小学生たちが、短大生となって入学してくれる時を迎えた。震災の時のことを話すと、何人もの当時の小学生が、あの時の短大生の優しさと強さに憧れて入学したという喜びを伝えてくれる。
11月6日、3年ぶりに対面で開催した桜の聖母短期大学の学園祭あかしや祭では、12月3日に開催される国際女性会議WAW!の公式サイドイベントとして、「福島学」のパネル展示とプレゼンテーションをし、女性活躍の契機とした。震災の翌年に始まった「福島学」は、学生自身が課題を見つけ、地域との交流を通して、地域のためにさまざまな活動をしてきた。学生が自ら目標を立て、自分の目・耳・手・足・五感そのものを使ってフィールドワークを行い、自らの気づきを共有し、多くの仲間と学びの深化を図り、リーダーシップを発揮している。
あの小学生が、あの夜、仮の避難所となった学生ホールで、震災以後の自分たちの学びを、多くの来場者の前で発表している姿に深い感銘を受けた。また、その取り組みがWAW!のサイドイベントとして外務省から承認され、6日当日には、森まさこ内閣総理大臣補佐官にもご来学頂け、学生たちへの温かい励ましのスピーチを頂いた。
WAW!は、国際女性会議World Assembly for Womenの略称で「ワウ!」と呼ばれている。WAW!には、世界のさまざまな地域、国際機関から女性の分野で活躍するトップリーダーが参加し、日本及び世界における女性のエンパワーメント、女性の活躍促進のための取り組みについて議論を行う。2014年から開催され、今回が6回目の開催となる。WAW!2022の前後である10月3日から2023年2月5日までをWAW!ウイークス(WAW! Weeks)と位置づけ、国際女性会議WAW!の趣旨であるジェンダー平等と女性のエンパワーメントに賛同し、一緒に盛り上げる取り組みを、公式サイドイベントと認定している。本学のあかしや祭での取り組みがそこに位置づけられた。
さらに、12月17日には「福島版女性会議WAW!ウイークス」が福島民報社主催で、福島市クリエイティブビジネスサロン(コラッセふくしま2階)において開催される。WAW!が扱う内容を「地方に住む人の自分事」として主体的に受け止める機会となるよう、地方のダイバーシティの考え方を議論する場が提供される。
女性のリーダーシップ、それは、必要としている人がいたら、ちゃんと観[み]て、共感し、近づいて、自らその人の隣人となることだ。震災以降、学生たちが発揮してきた女性活躍を大いに讃[たた]えたい。(西内みなみ、桜の聖母短期大学学長)