論説

【不登校過去最多】個別事情に寄り添って(11月18日)

2022/11/18 09:35

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 県内の小中学校で不登校とされた児童生徒は昨年度、文部科学省の調査で計2918人に上り、過去最多となった。県教委は、新型コロナウイルスの感染対策として学校活動が長期にわたって制限され、家庭環境も大きく変化したのが影響したと分析している。不登校は学校、家庭、友達関係などさまざまな要因が重なり合う。教育現場での継続的なコロナ対策が求められる中、一人一人の事情に寄り添う支援や対応が一層求められる。

 文科省は、病気やコロナ感染回避などでの休みを除き、年間30日以上欠席した場合を不登校と定義している。県内は、2012(平成24)年度の1566人から増加傾向が続いている。2019年度は2235人、2020(令和2)年度は2393人と100人台で増えてきたが、昨年度は525人も急増した。

 不登校の主な要因は「無気力、不安」が最多で、小学生は38・3%、中学生は39・9%を占めた。特に小学校は前年度を7・4ポイントも上回り、学年が上がるごとに増えている。運動会や学習発表会などの行事が中止・縮小されたり、給食中の会話を控える「黙食」が徹底されたりして、人と触れ合う場面が減りがちだったことが背景にある。制限が残る学校生活を強いられ、登校意欲を失った子どもも多かったという。

 少しずつ制限を緩める学校は増えている。とはいえ、第8波への警戒は怠れない。人との関わりの中で成長するという学校教育の意義と、感染防止の両立に向けては、なお模索が続くだろう。制限が継続されると、教職員が児童生徒と授業以外で接する時間は少なくなりかねない。不登校の兆しに早めに気付けるよう、きめ細やかな目配りにも一段と努めてほしい。

 不登校の児童生徒を支援し、学ぶ機会を確保することも大切だ。県教委はスクールカウンセラーや家庭との連携を強化し、チームを組んで教育相談の充実を図っている。不登校向けの教室を設けている学校もある。福島市は独自に雇用した元教員が対応している。多忙を極める現役教員を補う試みとして参考になるのではないか。

 フリースクールとの結び付きや情報交換を密にし、子どもの成長に最も良い環境を個別に探り、用意していく視点も欠かせない。

 教育の現場はもちろん、家庭でも、食欲や元気がない、いつもより変に明るい、普段と顔色が違うといったささいな変化を見逃さないようにしていきたい。(安島剛彦)