論説

【改正公選法成立】地方重視の見直しを(11月19日)

2022/11/19 09:07

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 衆院小選挙区定数を10増10減する改正公職選挙法が成立した。「1票の格差」は縮小したものの、本県を含めて地方の議員数は減り、区割りの見直しでは地域が分断される結果を招いた。改正案を審議した衆院特別委員会は制度を不断に見直す付帯決議を採択した。積み残された課題に真摯[しんし]に向き合い、党利党略を超えた議論を求めたい。

 付帯決議では、人口減少や地域間格差が拡大している現状を踏まえ、法施行後も議員定数や地域の実情を反映した区割りの在り方を国会で抜本的に検討すると明記した。与野党で速やかに協議の場を設置し、2025(令和7)年国勢調査の結果が判明する時点をめどに、具体的結論を得るよう努力するとも記した。地方は人口減の影響が色濃い。持続的で均衡ある国土の発展を推し進める上でも地方への配慮は不可欠だ。

 県内小選挙区は定数が5から4に1減され、地元の要望が国に届きにくくなる事態への懸念が市町村に広がっている。さらに、従来の2区や3区の市町村から「経済圏や文化の違いなどへの理解が感じられない」といった不満の声が上がる。県南地方の首長らは中選挙区制への復活にも言及している。

 地方の人口減少は今後も続くとみられる。あくまで人口比による定数配分にこだわれば将来、議員は首都圏や大都市部に偏り、地方との差は拡大するばかりだ。与野党協議での機械的な定数見直しは許されない。

 小選挙区比例代表並立制が導入されて四半世紀が過ぎた。政権交代が可能な二大政党制を促す狙いとは裏腹に、第1党の獲得議席数が得票率に比べて大きくなる現象を生み出し、現在の「一強政治」の土壌にもなっている。選挙区で敗れた候補者が比例で復活当選する仕組みに違和感や疑問を抱く人も少なくない。現行制度を徹底的に検証すべき時を迎えていると言えるだろう。

 制度の見直しを巡り、各党の利害が交錯する事態は想像に難くない。話し合いは難航も予想される。速やかに協議の場を設けるのであれば、有識者による第三者機関を設置して意見を聞くのも選択肢に入れるべきだ。

 改正公選法は、公布から1カ月後に施行される。付帯決議では、新しい区割りを十分に周知するよう政府に求めた。県内は全ての選挙区の枠組みが変わる。今のところ衆院解散の動きはないとはいえ、県民が混乱しないよう、きめ細かな情報発信も急がなくてはならない。(角田守良)