福島県内の要支援者避難計画 策定完了は6市町村 行政負担、支援者確保課題

2022/11/27 10:56

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有
県内59市町村の策定状況
県内59市町村の策定状況

 災害時に手助けが必要な高齢者や障害者ら「避難行動要支援者」一人一人の避難方法、支援者を市町村が事前に決めておく避難計画について、福島県内59市町村のうち対象者全員分の策定を完了したのは6市町村にとどまる。各市町村への取材で分かった。残る53市町村は対象者の一部のみ策定の段階か、未策定(策定中を含む)。背景には、大勢の対象者と個別に調整する行政側の負担や支援者確保の難しさなどがある。災害が激甚化・頻発化する中、専門家は逃げ遅れを防ぐため「計画策定を加速させるべきだ」と指摘する。


 計画策定は昨年5月、災害対策基本法の改正で市町村の努力義務となった。法改正の背景には2019(令和元)年の台風19号被害がある。福島県内では「直接死」32人のうち21人(66%)が65歳以上で、避難に手助けが必要な住民の逃げ遅れをいかに防ぐかが課題となっている。

 策定状況は【グラフ】の通り。59市町村のうち6市町村(10・2%)が対象者全員分を策定済みで、24市町村(40・7%)は対象者のうち一部を策定済み、29市町村(49・2%)は未策定だった。県は県総合計画で、2030年度までに全市町村の策定完了を目指す指標を設けている。2022年度内に43市町村での策定(一部策定を含む)を掲げるが、現時点で該当するのは30市町村にとどまる。

 伊達市は対象者約5800人のうち約2割で策定した。未策定者には文書を郵送して策定に必要な同意を求めているが、返信のない人も多い。担当者は「全員分の策定に向けて今後は別の方法も検討したい」と知恵を絞る。東京電力福島第1原発事故に伴い避難区域が設定された大熊町は対象者の抽出を始めた段階。担当者は「町に帰還していない住民も多く、支援体制の構築が課題となる」と話す。

 一方、計画の重要性は増している。喜多方市は今年8月の大雨で高齢者世帯を含む住宅127棟が浸水した。担当者は「幸いにも人的被害は出なかったが、今回のように全員が助かるとは限らない」と危機感を強め、早期策定を目指す。

 策定作業の加速に向け、県は今年度、市町村担当者向けの研修会や相談会を初めて催した。今後は先行事例などをまとめた手引書を作成し、配布する予定だ。福祉防災に詳しい跡見学園女子大の鍵屋一教授は「水害などでは高齢者や障害者が犠牲になりやすく、誰とどのように逃げるのかを事前に定めておくのが重要」と指摘。その上で「訓練などで実効性を検証していくことが望ましい」と語った。

■県といわき市総合防災訓練

 県といわき市は26日、県総合防災訓練を実施し、地震や津波の発生に備えた。いわき市では市民主体による訓練を行い、要支援者らを津波から守るための対応などを確認した。

 県災害対策課によると、県総合防災訓練を一般県民も参加する形式で実施するのは2018(平成30)年度以来、4年ぶり。


【県内59市町村の策定状況】

■策定済み=6市町村

相馬、天栄、只見、南会津、会津坂下、川内

■一部策定済み=24市町村

福島、会津若松、郡山、いわき、白河、須賀川、

二本松、田村、南相馬、伊達、本宮、国見、大玉、鏡石、檜枝岐、西会津、金山、会津美里、棚倉、

矢祭、鮫川、浅川、三春、楢葉

■2022年度中に策定(着手)予定=21市町村

喜多方、桑折、川俣、下郷、北塩原、猪苗代、湯川、柳津、昭和、西郷、泉崎、塙、石川、平田、古殿、小野、広野、富岡、浪江、葛尾、新地

■2023年度中に策定(着手)予定=8町村

磐梯、三島、中島、矢吹、玉川、大熊、双葉、飯舘