論説

【デジタル人材】バンク制度を広げたい(12月1日)

2022/12/01 09:00

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 福島市は「デジタル人材バンク」を新設し、知識に精通した市内在住者を12月1日から募集する。悩みを抱える企業や団体を同時に募り、橋渡しをする。デジタル化の推進に向けて有用な専門家を確保する新たな試みとして注目される。

 「インターネットの通信販売を拡大したい」「デジタルマーケティングを始めたい」など企業や団体から寄せられた相談にデジタル推進パートナーとして応じ、具現化に取り組む。今年度から来年度にかけて20人程度を登録したいとしている。

 フリーランスや副業を問わず、能力を備え、継続的に活動できれば対象になる。法人による登録も可能という。柔軟な登用は幅広く人材を集められる利点がある。市民や市内の企業が持つさまざまな知識や技術を発掘し、社会に生かせる点でも意味深い。

 ふくしまデジタル推進協議会を構成する市内の企業や団体から、キャッシュレス決済、インターネット通販などを進める上で専門家の確保が必要との意見が出ていた。これを受けた人材バンクは、人件費や交通費などの経費は受益者負担になるが、市の「新たなビジネスモデル創出支援事業」などを利用すれば軽減できる。デジタル化によって地域経済がさらに進展するよう積極的に活用してほしい。

 人材バンクのような取り組みを県内各地に広げていくのも大切だ。その際、コンピューター関連やデジタル領域を扱う県内の大学、専門学校などの教育機関と連携するのも有益ではないか。

 会津大コンピュータ理工学部はICT(情報通信技術)などに関する高い専門知識を有する卒業生を数多く輩出している。県内に拠点を持つ大手情報・通信企業やメーカー、コンサルタント会社などに就職する一方で、希望の職種や就職先が見つからず、県外に流れる学生も少なくないという。他の大学、専門学校を含め、人材が流出するのはもったいない。バンク制度を設けるならば、能力と時間のある学生にも門戸を広げて協力者を募り、将来の地元定着につなげる方法もあるだろう。

 国はデジタル田園都市国家構想の基本方針で、2026(令和8)年度までに全国で230万人の人材育成を目指している。重点事項の一つに「デジタル人材の地域への還流促進」を挙げている。地域の担い手が減り続ける地方がデジタル化の波に乗り遅れれば、都市圏との格差は広がるばかりだ。継続的な手厚い支援を求めたい。(神野誠)