論説

【県議任期残り1年】真価問われる課題対応(12月2日)

2022/12/02 09:27

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 県議の任期は来年11月19日の満了まで1年を切り、県内各党は県議選へ動き始めた。党勢拡大に向け、候補者擁立などの調整作業が水面下で進む。今後、政党間の駆け引きは活発になるとみられる。山積する県政の課題は重要な局面を迎えている。残る任期中、議員の真価が問われる。

 東京電力は、福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む処理水を来年春にも海洋放出する計画だ。政府は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との基本姿勢を示している。新たな風評を懸念する声が多いとして、県議会は9月定例会で「国による国内外での徹底的な理解醸成」を求める意見書を可決した。依然として理解が広がっていない現状を厳しく指摘したと言える。

 意見書の反映状況を確認し、実現していないのなら適切に対処するよう粘り強く働きかける必要がある。政府が言う「関係者の理解」の対象に県議も県民の代表として含まれるべきであり、海洋放出計画に対する姿勢も明確にしなければならない。

 来年4月に福島国際研究教育機構が誕生する。創造的復興の中核として、ロボットや農林水産業などがテーマの研究開発、国際的に卓越した人材の育成に力を入れるとしている。国主導で準備は進むが、本県の将来を左右する事業だけに、地域との連携などが焦点となる。県議会は積極的に関与し、意見を発するよう求めたい。

 新型コロナウイルス禍の出口が見えない中、感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指す動きが加速する。物価高騰対策も待ったなしだ。いずれも県民生活に直結する。12月定例会が6日に開会する。補正予算案には食料品、日用品をはじめ、あらゆる物資の値上がりにあえぐ家庭の支援策などが盛り込まれている。危機感、緊張感を持って議論を尽くし、県民の負託に応えてもらいたい。

 来年秋の県議選は現行の総定数58と19選挙区別の定数を変えずに行われる。いまだに道半ばの復興を前に進めるには、議会の規模を縮小すべきではないと現状維持を決めた経緯がある。県人口の減少を踏まえ、定数を減らさないことに疑問を抱く有権者もいる。理解を得るには全議員が職責の重さを改めて自覚し、県議会の存在意義を示していかねばなるまい。

 定例会の本会議は議場だけではなく、インターネットでも公開される。改選に向け、県民は県議会への関心を高め、各議員の姿勢や考えを確認していきたい。(角田守良)