県内の多くのファンも一挙一動に息をのみ、歓喜に沸いたに違いない。サッカー日本代表がワールドカップ(W杯)カタール大会の1次リーグE組で1位となり、2大会連続の決勝トーナメント進出を果たした。優勝経験のあるドイツ、スペインを打ち破っての快挙だ。スペインとのE組最終戦は負けが許されなかった。勇気ある試合運びで重圧をはねのけたチームの胆力をたたえたい。
日本代表はアジア最終予選の序盤で敗戦を重ね、森保一監督や不振選手への批判が絶えなかった。今大会はドイツ戦に逆転勝利しながら、格下とみられたコスタリカに敗れ、1次リーグ突破を危ぶむ声も上がっていた。スペイン戦は前半に先制を許したものの、後半に途中出場した堂安律選手が同点ゴールを決め、勢いのまま決勝点をもぎ取った。ドイツ戦とよく似た展開であり、選手交代とリスク覚悟の果敢な守備が奏功したと言えるだろう。
4月に決まった組み合わせを、本紙は「過酷なE組」の見出しで伝えた。森保監督は当時から「世界に追い付き、追い越すと考えたとき、素晴らしい対戦相手だ」と前向きに捉えていた。強豪のドイツ、スペインに照準を合わせたからこそ、高いレベルの強化が図られたのではないか。リーダーがビジョンを明確に示せば、困難な壁は越えられると証明してくれた。
本県関係者が日本代表を後押ししている。いわき市でレストランを営む西芳照さんは専属シェフとして今回も帯同し、食事で選手らを支える。世界の称賛を集める試合後の日本人サポーターによるごみ拾いには、福島大4年の木幡裕紀さんが加わり、代表の一人として大会関係者から表彰を受けた。
長友佑都選手らは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、郡山市の仮設住宅で子どもたちと交流するなど、被災地支援に取り組んできた。県内では、いわきFCがJ2昇格を決めた。福島ユナイテッドFCはJ3から高みに挑む。女子日本代表で活躍する遠藤純選手(白河市出身)をはじめ、将来有望な選手もいる。長友選手らの躍動に勇気と元気をもらい、さらに飛躍してほしい。
日本は決勝トーナメント1回戦でクロアチアと対戦する。現役時代に「ドーハの悲劇」を経験した森保監督は「時代は変わった」と最後までボールを奪い続けた選手を信頼する。歴史を変える8強入りは目前だ。一段と熱い声援で新しい景色を一緒に追いかけたい。(渡部育夫)