福島県の自主避難区域の賠償期間拡大 原賠審、子ども・妊婦以外 中間指針盛り込みで追加賠償も

2022/12/06 09:42

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 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は5日、東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県の県北地方などの23市町村が対象の自主的避難等対象区域の子ども・妊婦以外への賠償対象期間について、現行の「事故当初」から「2011(平成23)年12月」まで拡大する方向で合意した。見直し中の国の賠償基準「中間指針」に盛り込まれれば、追加的に賠償を受けられるケースも出てくる。避難指示区域の住民の精神的損害の増額については、裁判外紛争解決センターが定めた総括基準のうち「要介護状態」など10項目を中間指針に取り入れることも確認した。

 自主的避難等対象区域の賠償は、中間指針で妊婦・子どもについては事故発生時から2011年12月まで1人40万円を目安とし、2012年1月以降は個別の事例や類型ごとに賠償すると定めている。それ以外の住民は事故当初の損害として1人8万円を目安としていた。

 今回の見直しで、各判決を踏まえ、自主的避難等対象区域の妊婦・子ども以外の住民について、事故当初の時期以降も後続事故に「複合的な恐怖や不安を抱いたことには相当な理由がある」と認めることで合意した。対象期間は政府が原発事故の収束を宣言した2011年12月までとする方針。

 賠償額の目安は、各判決が子ども・妊婦の場合の3分の1から2分の1程度としていたのを参考に算出し、その際に既に賠償された8万円を控除する方向で検討する。実際に自主避難した場合の他、区域内にとどまった場合も対象となる。

 自主的避難等対象区域の範囲については現行を維持するとした。


■避難指示区域の精神的損害 要介護者や妊婦増額へ

 避難指示区域の住民の精神的損害の増額理由とする10項目は【表】の通り。裁判外紛争解決手続き(ADR)で積み上げた和解実績に基づき類型化した総括基準を踏まえ、中間指針に新たに盛り込む方針。通常の人と比べて精神的苦痛が大きいとして、日常生活阻害慰謝料に、過酷避難状況などの慰謝料とは別に上乗せできることにする。

 増額理由のうち①~⑤については、内容が明確で認定が比較的容易だとして増額の目安を設定することにした。一方、⑥~⑩については項目に該当するかどうかの判断に高度な評価を要するなどの事情があるとして個別具体的な事情を踏まえて増額の金額を算定する方向にした。

 次回会合は12日の予定で、中間指針第5次追補の素案について議論する。


【原賠審が中間指針に新たに盛り込む精神的損害の増額理由】

①要介護状態にある

②身体または精神の障害がある

③①または②の人の介護を恒常的に行った

④乳幼児の世話を恒常的に行った

⑤懐妊中である

⑥重度または中等度の持病がある

⑦⑥の人の介護を恒常的に行った

⑧家族の別離、二重生活等が生じた

⑨避難所の移動回数が多かった

⑩避難生活に適応が困難な客観的事情であり、上記の事情と同程度以上の困難さがあった