東日本大震災・原発事故

「おかえりダルマ市」 福島県双葉町での開催は12年ぶり

2023/01/08 09:54

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12年ぶりに双葉町内で開かれているダルマ市で引き合った巨大ダルマ
12年ぶりに双葉町内で開かれているダルマ市で引き合った巨大ダルマ
12年ぶりに町内で開かれているダルマ市で双葉ダルマを買い求める家族連れ
12年ぶりに町内で開かれているダルマ市で双葉ダルマを買い求める家族連れ

 福島県双葉町の新春恒例のダルマ市は7、8の両日、JR双葉駅前で開かれている。東京電力福島第1原発事故の影響で、昨年までいわき市で催されてきた伝統行事が12年ぶりに古里に戻った。初日は名物の「巨大ダルマ引き」などで新春を祝った。

 ダルマ市は江戸時代から約300年続いている。原発事故発生後も町民有志が伝統を継承し、避難先で毎年実施してきた。昨年8月に特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除され、地元開催が決まった。原発事故発生前と同様、町や町商工会、町観光協会などでつくる実行委員会が主催している。

 JA福島さくら女性部協議会双葉支部ダルマ部会が絵付けした双葉ダルマを販売している。大小さまざまな縁起物が並び、大勢の来場者が買い求めている。巨大ダルマ引きでは体長約3㍍、重さ約600㌔のダルマを中心に綱引きを実施。南北に分かれて綱を引き合い、豊年満作を願う北に軍配が上がった。

 8日はダルマみこしや民俗芸能発表会などがある。


■「待望」1000人超来場 伝統行事帰還、復興への一歩


 7日に福島県双葉町で12年ぶりに始まったダルマ市には1千人超の来場者が詰めかけ、町民らが町の伝統行事の帰還を喜んだ。主催者によると、昨年8月に特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除されて以降、町内に1千人を超える来場者が訪れたイベントは初めて。復興へ確かな一歩を踏み出し、関係者は町のにぎわいづくりへ決意を新たにした。

 「久しぶり、元気だった」。双葉ダルマの売り場に町民らの明るい声が響く。12年ぶりの再会を果たした姿もあった。毎年ダルマ市に足を運んできた町内の主婦山田史子(ちかこ)さん(65)=福島県いわき市に避難=は「地元開催はやっぱりうれしい。町が元気になってきた」と喜んだ。

 「町民が伝統行事の復活を待ち望んでいた証」。JA福島さくら女性部協議会双葉支部長の石田恵美さん(68)=いわき市に避難=は笑顔で話した。会員と絵付けしたダルマを約500個用意したが、初日だけで半数以上が売れた。「想像以上だった。『これだけ盛り上がっているなら双葉に戻ろうかな』という声もありうれしかった」と笑顔だった。

 約300年の歴史を誇る新春の伝統行事は、町民有志が守り抜いてきた。「ダルマ市は町民の心のよりどころ。絶対に絶やさない」。原発事故発生から約半年後に設立された団体「夢ふたば人」が2012(平成24)年、いわき市の仮設住宅での実施にこぎ着けた。笑顔や涙であふれ、再会もあった。

 設立メンバーで現会長の中谷祥久さん(42)は当時、「子どものころから大好きな行事を必ず古里で復活させる」と心に決めた。毎年、いわき市で催し、歴史をつないできた。

 7日、中谷さんは大勢の町民らの笑顔を見つめ、「念願がようやくかなった」と感慨に浸った。ただ、原発事故発生前の活気にはほど遠いという。露店もまだ半数ほどだ。「少しずつ本来の姿を取り戻し、町の復興につなげていきたい」。完全復活を目指し、挑戦を続ける。