論説

【生ごみの堆肥化】家庭菜園で活用しよう(2月1日)

2023/02/01 09:00

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 化学肥料や農薬などを使わない有機農業の普及に向けては機運づくりが欠かせない。日常生活で出る生ごみを堆肥化して家庭菜園に活用する試みは、減量化につながると同時に有機農業への関心を深めるのに役立つ。行政や関係団体が連携を強め、専門家の助言や指導を受けられる機会を積極的に設けるなどして堆肥化を推進してほしい。

 農林水産省は2021(令和3)年に策定した「みどりの食料システム戦略」で、有機農業の面積を2050年までに全農地の25%に当たる100万ヘクタールに拡大する目標を掲げている。2020年時点では全農地の0・6%にとどまっている。有機農業に地域ぐるみで取り組む先進的な市町村を「オーガニックビレッジ」として支援し、計画策定や先進地を目指す段階から交付金を支給するなどして普及を目指している。

 二本松市が今月、県内で初めてオーガニックビレッジ宣言をする。実施計画では有機農業者数や農地面積の拡大に加え、消費者の関心を高めることを重視している。加工、販売などとの連携を盛り込み、生産された作物の流通にも力を入れる。他の地域の見本や参考になるような成果を得られるよう期待したい。

 本県のごみの排出量は全国ワースト2位で改善が求められている。減量化については、コンポスト容器などの購入費を助成する自治体もある。

 福島市は1992(平成4)年からコンポスト容器、密閉型容器、電動式生ごみ処理機などを対象に上限2万円で購入費の2分の1を補てんしている。制度ができた当初は1300件を超える申請があった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後は40~50件程度に落ち込んだが、家庭菜園を再開する動きに合わせて増加に転じ、2021年度は172件となっている。

 利用者へのアンケートでは、ごみ減量に効果があったとの意見が大半を占めた一方で、うまくできなかったといった声もあるという。堆肥作りは糖分解など三つの発酵過程が必要で、それぞれの過程で特徴的な微生物が働く。処理が不十分だと作物に悪影響を与える場合もある。悪臭や虫の発生の原因になり、断念する人も多いと聞く。

 購入費の助成に加え、専門家らを迎えた初心者向けの講習会を開くなどの底上げ策も必要ではないか。堆肥とともに土壌関係も学べば、環境や有機農業について考えるきっかけにもなる。野菜の育て方講座を組み合わせる方法もあるだろう。(三神尚子)