県は、漆器や陶磁器など本県の伝統的工芸品の魅力を広める取り組みを展開している。県内をはじめ都内の飲食店と連携し、県産食材を使った料理や県産酒を伝統的工芸品の食器などで提供する。使うほどに味わいを増す工芸品の良さに直接触れてもらうことで需要を高め、後継者育成にもつなげてもらいたい。
「フクシマ クラフト ダイニング~器と食のマリアージュ」と銘打ったキャンペーンで、器と食材が調和し、相乗効果で互いが引き立つ趣向を楽しんでもらう。各参加店で会津本郷焼、大堀相馬焼、会津塗、奥会津編み組細工、二本松萬古焼、総桐箪笥[たんす]の皿や茶わん、とっくり、箸、コーヒーカップ、コースター、ざるなどを使い、懐石料理やフレンチ、イタリアン、広東料理などを提供する。
第1弾は昨年末までの約1カ月間、4店舗で繰り広げられ、延べ約1100人が利用した。現在は、第2弾として別の6店舗で12日まで実施している。各店は県産のコメや肉、野菜、日本酒などを取り入れたメニューを用意している。提供内容や価格は県のポータルサイト「ふくしまの伝統工芸」に掲載されている。
伝統的工芸品は古来の技術・技法で、変わらぬ材料を使い、主に手作業で作られた日常品を指す。一定の地域で相当の人数が携わっていることも要件だ。県内には漆器や陶磁器、木工品、織物、和紙など国指定を含め40品目ある。浜、中、会津地方の風土に根差した宝と言える。
多くの産地は後継者不足のほか、材料が手に入りにくいといった厳しい環境にさらされている。大量生産のプラスチック製品や安価な輸入品にも押されがちだ。伝統的工芸品には手仕事ならではの温かみがあり、デザインや色彩の美しさ、高い機能性など優れた特徴がある。手入れをして長く使うほど手になじみ、大切にすれば一生ものになる。価格は割高でも、見合った価値や魅力があると、広く知ってもらうことが需要喚起や後継者確保への入り口になる。今回の企画は期間限定で対象も限られている。他の工芸品の追加を含めて継続を検討するよう求めたい。
キャンペーンの一環で先月末、都内のフランス料理店で交流会が開かれた。シェフと会津本郷焼の作家が首都圏の参加者9人と食事を共にし、料理や器に込めた思いを語った。参加者から「産地に行ってみたい」との声が上がったという。職人の技に触れる機会も設けるなどして、伝統工芸の産地に新たな光を当ててほしい。(古川雄二)