二審は一転「無期懲役」 福島県三春町のトラック殺人 一審の死刑破棄 仙台高裁判決

2023/02/17 09:25

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 福島県三春町で2020(令和2)年5月、面識のない男女2人をトラックで故意にはねて殺害したとして、殺人や道交法違反(ひき逃げ)などの罪に問われた本籍伊達市、住所不定、無職男(53)の控訴審判決で、仙台高裁は16日、死刑とした一審地裁郡山支部の裁判員裁判判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。県内の裁判員裁判で死刑とされた被告の二審判決は2例目で、一審判決の破棄は初めて。

 殺意を認めて求刑通り死刑とした一審判決に対し、被告が量刑不当などを理由に控訴。弁護側は被告に殺意はなく傷害致死罪にとどまると主張し、控訴審は殺意の程度や量刑が主な争点だった。

 深沢茂之裁判長は判決理由で「明白な殺意があった」と一審同様に殺意を認定。前刑で服役した刑務所を出所したばかりの被告が今後への不安から「長く刑務所に入りたい」との自棄的な考えで起こした事件とした。「身勝手かつ自己中心的な事案。命が理不尽に奪われた結果は重大だ」と非難した。

 量刑判断では死刑の適用は慎重に行うべきとした上で、場当たり的で稚拙な態様や計画性を考慮すると「生命軽視の態度、姿勢は甚だしいが、顕著とまでは言えない」と指摘。2人が死亡する危険性を認識していたが、積極的な殺意はないなどとして「極刑がやむを得ないとまでは言えない」と結論づけた。