彼岸のともしび(3月18日)

2023/03/18 09:24

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 「ろうそく岩」の名で富岡町民に愛されてきた白い巨石が、富岡漁港北側の海辺にそびえていた。富岡川が太平洋に流れ込む場所に位置し、青く輝く海との景観は町の誇りだった▼12年前、震度6強の揺れとともに海中に崩れ落ちた。約40分後、高さ20メートルを超える大津波が町を襲い、JR富岡駅と周辺の街並みをのみ込む。濁流は海から約600メートル離れた高台の手前まで押し寄せた。高台に避難したおかげで命を救われた町民は少なくない▼標高18メートルのその地に今月11日、ろうそく岩を表現した町の慰霊碑が建立された。津波で亡くなった町民や長引く避難生活に疲れ果て、失われた命への追悼の言葉が刻まれている。「私たちは富岡町とともに生き富岡町を守り抜く」と結びに復興を誓う。碑は震災を乗り越えて、一歩ずつ再生へ歩む町の前途を見守る▼きょうは彼岸の入り。21日の春分の日を中日に前後の3日間、十三回忌の幾つもの供養の灯が被災地にともる。ろうそく岩の上にはともしびを摸[も]したように見える木々が生い茂っていた。時がたっても、かすまぬ記憶を共にして、みんなで前に進んでいきたい。〈人界のともしび赤き彼岸かな 相馬遷子〉