記念日は世の中にたくさんある。日本記念日協会が認定し、登録しているだけでも年間2500件を超える。このうち県内の自治体や企業などが関わる登録は9件で、広野町は10月5日を「広野町童謡の日」とする計画だ。記念日は地域の歴史や文化、人物、特産品などを知ってもらう契機になり、新たな地域づくりの起点としても生かせる。積極的に活用してはどうか。
JAふくしま未来は今年1月、あんぽ柿誕生100年を記念して「伊達のあんぽ柿の日」を制定した。伊達市梁川町五十沢[いさざわ]地区の生産者らが13人だったのにちなみ、旬に合わせ12月~2月の毎月13日とした。東京都内のフランス料理店や日本料理店であんぽ柿を使ったメニューを提供してもらったり、キャラクターを登場させたりして盛り上げた。関係者は「幅広い世代にアピールできる。消費拡大につなげたい」と効果を語る。
いわき市のいわき観光共同キャンペーン実行委員会は1月31日を「アロハの日」と定めている。「アロハ」とあいさつする際、親指と小指を立てて他の指を折った手の形が「1・3・1」に見えるのに合わせた。1年目の今年は、いわき湯本温泉の宿泊施設従業員やタクシー運転手らが「アロハ」と声をかけて出迎え、スパリゾートハワイアンズで記念イベントを繰り広げた。地域が一体となった取り組みは「フラシティいわき」の一翼を担うと期待できる。
このほか、平田村が7月14日に定めた「平田村あじさい記念日」、須賀川市の特撮文化推進事業実行委員会が地元の故円谷英二監督の誕生日に当たる7月7日にちなんで決めた「特撮の日」などがある。民間は、自動車部品のリサイクルなどを手がけるナプロアース(本社・伊達市)が3件設けている。
協会に登録しなくても定めることはできる。例えば8月21日の「県民の日」は県の条例で制定された。郡山市は市民らでつくる実行委員会が毎年10月の第1日曜日を中心に「郡山市音楽の日」のイベントを展開し、定着を図っている。
福島市や歴史と伝統が息づく会津地方にはあまり知られた記念日がないように感じる。福島市は全国に誇る花見山や多彩なフルーツを有するほか、野球殿堂入りした作曲家古関裕而さんの出身地でもある。新たな記念日を育ててみてはどうか。もちろん一過性の盛り上がりとならないよう、継続的な広報活動や住民を巻き込む必要がある。毎年訪れる節目の日は、古里への愛着を深めるきっかけになるだろう。(湯田輝彦)