
人気作家村上春樹さんの新作小説「街とその不確かな壁」(新潮社)は13日、発売された。主人公が館長を務める図書館が福島県南会津町にあると読めるような描写があり、ファンや地元関係者が関心を寄せている。
新作は3部構成で、2部は主人公の「私」が図書館長に就く場面から始まる。「私」が面接のため東京から図書館に向かう際、東北新幹線を郡山で降り、在来線で会津若松まで行き、ローカル線に乗り換える。山と山との間を縫うように抜けて着いた駅の前にはタクシー乗り場とバス乗り場があり、図書館までは歩いて10分ほどと描写されている。会津若松からのローカル線が会津鉄道だとすれば、「私」が降りた駅は南会津町の会津田島駅となり、駅から10分ほどの南会津町図書館が舞台、ということになる。
村上作品の熱心な愛読者である南会津町田島の50代男性は新作を購入し、「町に関係があるとすれば、ファンが『聖地巡礼』で訪れてくれるのではないか」と期待した。南会津町図書館の広野友一郎館長は「作品の効果で町内や図書館に足を運ぶ人が増えてくれればうれしい」と語った。
福島市のくまざわ書店福島エスパル店では、通常の開店時間より2時間早い午前8時から販売した。蒲生みゆき店長は「県内が舞台になったことが、お客さまが本に興味を持つきっかけになってほしい」と話した。各地で特設コーナーを設ける書店が見られた。
村上さんは郡山市出身の作家古川日出男さんと親交が深く、古川さんが学校長を務めた「ただようまなびや 文学の学校」のゲストとして2015(平成27)年11月、郡山市を訪れた。村上さんの前作「騎士団長殺し」では、主人公が浜通りを訪れる描写がある。