海越えた絆の一歩 「わらじまつり」がオランダへ 現地住民が再現、福島市の魅力発信

2023/04/28 09:22

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オランダに送るわらじを制作する西坂忠一さん
オランダに送るわらじを制作する西坂忠一さん

 福島市の夏祭り「福島わらじまつり」が6月18日、オランダの都市デン・ヘルダーで行われるイベントで現地の住民の手によって再現される。日本文化に関心のあるオランダ人らでつくる蘭日協会が、東京電力福島第1原発事故後に定着した本県の誤ったイメージを拭い去る一助にし、復興に向かう本県を知ってもらおうと企画。協会の関係者は「祭りを通して福島の魅力を伝えたい」と意気込んでいる。

 中心となって準備を進めているのは、協会長で、ジャーナリストのイングリッド・ハウトコーペルさん(56)ら。本県で県産野菜の安全性を取材し、オランダの雑誌などで発表したり、福島市や桑折町などに滞在して小学生と交流したりした経験から、欧州で正しい本県の情報が伝わっていないと実感した。

 「福島は美しい自然を持ち、活力にあふれている。心の温かい人々の住む素晴らしい土地だ」。本県の良さを再認識してもらおうと立ち上がった。今年、協会設立65周年に当たるため、福島市滞在中に知った福島わらじまつりを再現すると決めた。福島わらじまつり実行委員会事務局の福島商工会議所が振り付け動画を協会に紹介した。イベントの広報活動の中で、ハウトコーペルさんは本県の復興状況や県産食材の安全性を伝える。

 デン・ヘルダーは北部の港町。この街にある日本庭園で行われる日本文化を紹介するイベント「ジャパンデイ」のオープニングでわらじまつりを披露する。

 担ぎ手や踊り手は今後募る予定。日本語・文化を学ぶオランダの学生や現地の日本人、協会会員らを想定している。福島商工会議所が用意したわらじまつり用の法被を身に着けて踊る。

 使用するわらじは約3メートルで通常の4分の1ほど。現地の住民が担いで、近くの小学校から庭園までの100~150メートルの道を練り歩く。

 福島わらじまつりで使用する大わらじと同様、福島市の御山敬神会の会員6人がわらじを手作りしている。5月8日に運び出し、航空便で現地に空輸する。

 27日、御山敬神会副会長の西坂忠一さん(78)は仕上げ作業をこなした。会長の西坂浩一さん(71)は「オランダの人が福島に関心を抱くきっかけになってほしい」と期待する。

 ジャパンデイ当日は東北6県の代表的な祭りを集めた「東北絆まつり」が青森市で開催される。福島わらじまつり実行委員会委員長の小河日出男さん(78)は「今回は共演はかなわないが、オランダで頑張ってくれる分、自分たちも気合が入る。いつか現地に出向きたい」と夢を膨らませた。