論説

【観光キャンペーン】鉄道利用促進の契機に(5月23日)

2023/05/23 09:13

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 新型コロナウイルス禍で落ち込んだ県内の観光を官民が連携して再生させる動きが本格化している。「福が満開、福のしま。ふくしま秋観光キャンペーン2023」が9月から11月まで県内全域で繰り広げられる。観光客を呼び込み、各地で課題になっている鉄道の利用促進にもつなげてほしい。

 キャンペーンは、本県がJR東日本の旅行商品の重点販売地域に指定されたのを受け、県観光復興推進委員会が展開する。JRなどと連携した本県単独での大規模な誘客事業は2019年度以来4年ぶりとなる。前回は台風19号の影響で十分な成果を残せなかった。さらに、県内の2021年の観光客入り込み数は3545万人で、コロナ禍前の2019年の5634万人から約4割も減っているだけに、関係者は大きな期待を寄せている。

 今回は食や温泉、文化、祭り、体験、絶景、復興などの観光素材を全国に発信する。新型コロナによって様変わりした観光需要に対応するのが特徴だ。例えば、健康志向の高まりを受け、醸造文化を生かした発酵ツーリズムなどを売り込む。豊かな自然に触れ、非日常を体験するエクストリームツーリズムの魅力も発信していく。

 具体的な戦略は県、交通、観光関係団体などで構成する推進委員会内の検討部会が構築する。家族や個人旅行客の増加を見込み、福島ならではの新たな旅行モデルを提案してもらいたい。

 鉄道は貴重な観光資源と言える。1級河川の只見川沿いを走行するJR只見線をはじめ、車窓に広がる県内各地の自然豊かな景観は多くの人を魅了してきた。車中で郷土食や地酒を味わいながら演奏会などが楽しめるイベント列車もある。キャンペーンでは、鉄路をスタンプラリーのコースに加えるなど鉄道を活用した企画をさらに充実させ、全国からの誘客に生かすべきだろう。

 Suica(スイカ)などの交通系ICカードが県内全駅で利用できるよう求める声が観光関係者から出ている。誘客を促進するには旅行自体の魅力とともに、利便性を高める視点も欠かせない。キャンペーンを観光客の受け入れ態勢を向上させる契機にする必要がある。(角田守良)