政府目標に先駆けて2030年度までに脱炭素化を目指す環境省の「先行地域」に会津若松市が選定された。県内では初めてで、市は共同提案者と連携し、再生可能エネルギーの導入を加速させる。脱炭素社会の実現に向けた先進モデルを構築し、県内外に波及させてほしい。
先行地域はおおむね5年間にわたり、国の財政支援を受ける。太陽光発電や蓄電池を導入したり、省エネ機器に更新したりする際、原則3分の2が国からの交付金で賄える。市の提案では約68億円の事業費が見込まれるだけに、手厚い支援といえる。
対象となるエリアは、市街地の鶴ケ城周辺95ヘクタール、物流施設が集積する会津アピオ周辺44ヘクタール、郊外の湊町全域9423ヘクタールで、3エリアの年間総電力需要約4438万キロワット時相当を再エネで賄う。対象エリアの住宅や事業所、公共施設に太陽光パネルと蓄電池を導入して相当量の再エネを生み出すほか、既存の再エネをエリア内で安価に融通する仕組みをつくる。
具体的には、太陽光パネルを初期費用なしで設置できる「ゼロ円ソーラー」を活用する。発電事業者が無償でパネルを設置し、維持管理を行う「PPA(電力購入契約)モデル」と呼ばれる方式で、契約期間満了後にはパネルが無償譲渡される。自家消費分は無料になり、余剰分の売電もできる。ロシアのウクライナ侵攻を受けて燃料価格が高騰し、電気料金が値上がりする中、導入のメリットを享受できれば、地域全体への普及の追い風になるだろう。
安定的な電力供給を維持するためには、電力会社と小売事業者との間で需給バランスを調整する必要がある。2025(令和7)年度にも、発電量や需要電力を人工知能(AI)で分析する共同事業体「会津エネルギーアライアンス(仮称)」を立ち上げる。
共同提案者には県、一般社団法人AiCT(アイクト)コンソーシアム、会津大、会津若松卸商団地協同組合、東邦銀行が名を連ねる。会津の産学が強みとするデジタル技術を生かす好機であり、資金調達などの面で金融機関によるサポートは心強い。産学官金が手を携え、雇用創出や地域経済の活性化につなげる地方創生のモデルとしても注目したい。(紺野正人)