鉄路と生きる

【鉄路と生きる(49)】第5部 只見線 若者の発想で応援 福島県内外学生ら観光商品を開発

2023/05/31 09:15

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只見線と地域の活性化には若い力が欠かせないと語る高橋さん
只見線と地域の活性化には若い力が欠かせないと語る高橋さん

 JR只見線全線が舞台のすごろく、只見駅近くの神社を案内するパンフレット、会津柳津駅近くの菓子店の新商品―。手がけたのは会津大短期大学部産業情報学科教授の高橋延昌さん(52)とゼミの学生たちだ。只見線が新潟・福島豪雨で被災した後、フィールドワークを通して沿線地域の魅力を発掘し、発信に力を注いできた。

 「奥会津は魅力の宝庫。豊かな自然や人といった資源を活用すれば、只見線をもっと盛り上げることができる」。高橋さんは手応えを感じている。

 2014(平成26)年、知人の拓殖大教授から「福島の復興に学生と一緒に関わりたい」との相談を受けた。東日本大震災の被災地域に比べ、豪雨災害のあった奥会津への関心が高くないと感じていた高橋さんは、迷わず、被災した只見線の復興支援を提案した。都内の学生に自身のゼミの学生も交えて、応援作戦をスタートさせた。

 高橋さん自身、それまで只見線に乗車したことがなく、基礎知識もなかった。沿線自治体で現地活動しながら、鉄路の歴史、新潟・福島豪雨の被害、地域の現状を学生と一から学んだ。

 只見線すごろくはゼミ生が考案した。沿線の魅力を家庭でも感じてもらい、現地を訪れるきっかけにしてほしいとの思いを込めた。会津若松―小出(新潟県魚沼市)駅間の全長135キロのレールを表現し、各駅や沿線地域の観光資源を紹介している。イベントなどで配布している他、高橋さんのホームページから無料でダウンロードできる。

 拓殖大、専修大の学生と連携し、只見線沿線の観光資源をイメージした起き上がり小法師(こぼし)も制作した。只見川を手こぎ舟で渡る「霧幻峡(むげんきょう)の渡し」や地元の産品をモチーフにしている。全線再開通後は金山町の会津川口駅構内の町観光情報センターなどに展示され、多くの観光客を出迎えた。高橋さんは「只見線沿線の文化や自然に関心を持ってもらうきっかけになれば、うれしい」と語る。

 奥会津は県内でも人口減少が深刻な地域だ。全線再開通後、以前より観光客が訪れるようになったが、それでも赤字解消は容易ではない。「地域活性化に力を入れたい。それが只見線の利用促進にも直結する」と考える。

 ゼミの活動を通して、地域と只見線を盛り上げるには高校生や大学生など、若い視点の大胆な発想が不可欠だと実感した。「若者の発想を取り上げる機会を増やしていきたい」と力を込めた。