論説

【降水帯予測前倒し】災害への備え万全に(6月1日)

2023/06/01 09:25

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 大雨による水害や土砂災害などに注意が必要な時期を迎えた。東海地方以西が梅雨入りし、大型で強い台風2号が近づいている。気象庁は先月、線状降水帯の発生を伝える「顕著な大雨情報」の発表を、従来より最大30分前倒しする運用を始めた。こうした情報に気を配り、災害に万全の備えを整えたい。

 これまでは降水量などの基準を満たしてから発表していたが、基準を超えると予測した場合も「発生した」とみなして対応する。線状降水帯は発達した積乱雲が次々と生まれて線状に連なる降水域で、同じ場所で長時間、大雨を降らせる。大きな災害の原因の一つとなっており、対策が強化されたと評価できる。

 気象庁が昨年6月から運用している「半日前予測」と混同しないよう注意が必要だ。これは大雨となる可能性がある程度高い場合、約12時間から6時間前に降水帯発生の可能性を伝える。心構えを一段高め、早めの避難や安全確保を促す情報といえる。新たに提供される情報は、発達した雨雲がすでに形成され、危険が差し迫った状況で発表される「念押し」と理解する必要がある。

 半日前予測の的中率は4回に1回程度と3割弱だが、「30分前予測」は過去の大雨に照らして8割を超えるという。これらの気象情報と自治体からの避難指示などを常に確認する意識付けが大切になる。情報をただ待つのではなく、場合によっては速やかに身の安全を確保する自主的判断も重要だろう。

 県は今年度、適切な避難行動を県民に周知する「マイ避難推進員」を採用し、防災出前講座を開催している。市町村と連携し、水害や土砂災害のリスクが高い地域などを対象としており、これまでに本宮、郡山両市で開いた。参加者は避難場所や道順、避難のタイミングなどを避難シートにまとめた。各家庭でも実践してはどうか。

 県内では、会津地方を中心に被害をもたらした昨年8月の豪雨災害が記憶に新しい。2019(令和元)年10月の台風19号、2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨では河川の氾濫と家屋への浸水などが相次いだ。自然災害の発生頻度は高まっている。天災は忘れぬうちに、と肝に銘じたい。(湯田輝彦)