一流選手を惑わすドリブルは国境をまたぎ、サッカーファンの度肝を抜いた。世界最高峰のイングランド・プレミアリーグに初挑戦した三［み］笘［とま］薫選手。１年目で所属クラブの主役にのし上がり、今季の戦いを終えた▼異色の経歴が目を引く。高校時代までＪ１川崎フロンターレの下部組織で活躍した。トップチーム昇格への打診を断り、筑波大に進む。「実力が足りない。将来を考えて鍛え直したい」と悩んだ末の決断だった。あえて、プロへの最短距離を避けた。長い目で自分の生き方を選んだ冷静さが飛躍の原点か▼１日、来春卒業予定の大学生らへの採用面接が解禁された。民間調査によると、内定率は５月中旬時点で７割を超える。しかし、多くが就職活動を続けると答えた。コロナ禍明けの人手不足で売り手市場とされる中、会社の将来性や待遇を吟味する傾向が強いのだろう▼人生の節目は誰しも足踏みするが、就活は自分の足元を見つめ直す機会になる。三笘選手は大学卒業後、川崎を経て海を渡った。遠回りのようだが、着実に力を付けて階段を駆け上った。県内の学生諸君、１０年後の未来にどんなシュートを蹴り込むのか。「急がば回れ」の言葉もある。＜２０２３・６・２＞
